もし、自分の家に、ある日「かみさま」がやってきたら!?
それはもう、なにか願い事を叶えてくれるかも! なんてワクワクしてしまいますよね。
「大当たり〜! おめでとうございます! 特賞、かみさまのたまご、当たりました〜!」
商店街の福引きで「かみさまのたまご」をあてた幸介。係のおじさんによれば、商店街の守り神さまが生んでくれたたまごで、すごくラッキーだと言うことなのですが……。
家に持ち帰るとお母さんも「願いごとをばんばんかなえてくれるかも!」と大喜び。そしてたまごからかみさまが出てくるのを待っていると、生まれてきたのは、大きな三角形の耳、しずくのようにぽってりとした体に全身もふもふの毛、しっぽは丸く赤くて、ちょぴっとしたくちばし‥‥‥。なんともユーモラスなぬいぐるみのようなかみさまが誕生しました。かみさまは「ボンテン」と名乗り、幸介を「乳母(めのと)」と呼んですぐに腕の中に飛び込み、懐いてきました。
しかしさすが生まれたてだからなのか、その後のボンテンとの生活は、食事のお世話に、おふろに遊び。三十分の散歩、ひるねのつきそい、ブラシでの毛づくろい、トイレの手伝い、そして暇さえあれば抱っこをねだられ、まるで子育てのよう。学校に行っている間だけはボンテンから解放され、学校がオアシスだと幸介が感じる場面では、手を焼いている様子がありありと伝わってきて、ちょっと笑ってしまいます。
さすがにこんなに手をかけてるのだから、そろそろお願いを叶えてくれるはずと、ボンテンに犬か猫が欲しいというかねてからの願いをお願いしてみる幸介。しかし、ボンテンの答えは「おぬしにはもうわれがいる。うんとかわいがり、めんどうを見るべきものがいるのだもの。かなえられている願いは、われにもかなえようがない。」というもの。そんな、こんなにがんばったのに‥‥‥。
さて、このあと幸介やお母さんの願い事は叶えてもらえるのでしょうか? ボンテンの言葉によれば、かみさまが願いを叶えてあげたくなるかどうかは、どうやらその人の願い方にあるようなのですが、ボンテンが全力で幸介たちを助けてあげたくなる時というのは、いったいどんな時なのでしょう? 意外にもその鍵は、ボンテンに対して終始そっけない態度を貫いていた幸介のお父さんの行動と態度によって解き明かされていきます。
こちらは、「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズでおなじみの廣嶋玲子さんによる新シリーズ。「銭天堂」よりも本の大きさも字の大きさも大きいので、「銭天堂」シリーズはまだ読むのがちょっと難しいなというお子さんでも手にとりやすいでしょう。対象年齢の目安は小学三年生ぐらいから。ユーモラスでとっても親しみやすい木村いこさんの挿絵も、読んでみたい!という気持ちを盛りあげてくれそうです。甘えん坊でちょっぴりわがまま? けれども、ぽってりとしてもふもふの抱き心地良さそうなボンテンは愛嬌たっぷり。読んでいくうちにどんどん愛着が湧いてきてしまいそうです。
「かみさま、お願い!」あまり深く考えずに思わず願ってしまうこの言葉。本書で「かみさま」こと「ボンテン」に出会った後は、子どもたちだけでなく大人も、願い方にちょっとした変化が起きるかもしれません。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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商店街の福引で幸介が当てたのは、「神様の卵」。やがて神様の誕生を迎えると、願い事が叶い放題だと喜び、お母さんと一緒に願望をぶつけるべく、いわば赤んぼで手間がかかる神様のお世話に明け暮れる。神のご加護はあるのか?
編集者コメント
「かみさま、お願い!」……われわれは一日何回そう思っているのでしょう。一度も思ったことがない!というひとは稀ではないでしょうか。安易にとなえてしまいがちなこの言葉。願いと現実の間にある溝を埋めるのに、神頼みはどんな意味があるのでしょう。俗っぽい願いや欲をそのままぶつける人間とは……。物語をただただ楽しんだ先に「天は自ら助くるものを助く」がしみいってくる物語です。
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