「カキの木山」にひとりで暮らしている「オニタロウ」。
まだ子どものオニのようですが、「オニが谷」で生まれた子オニたちは十さいになると、「オニが谷」を出て、自分で住む山を見つけなければならないという決まりがあり、ひとり「カキの木山」にやってきたのでした。優しい性格のオニタロウは、「オニが谷」ではばかにされたり、しかられてばかりでしたが、「カキの木山」では動物たちの人気もので仲良く暮らしていました。
ある秋のこと、オニタロウのところへ「とうさんオニ」がやってきます。そこで「コブン(子分)はいるのか?」と聞かれ、ついコブンが30人もいる、とウソをついてしまったオニタロウ。二月の満月のお祭りの日にとうさんオニにコブンを会わせる約束をしてしまいます。本当はコブンなんてひとりもいないのに‥‥‥。いったいどうしたら良いのでしょう。
そこに登場したのが、オニタロウの良き相談相手であるカラスのカースケ。カースケの提案により、オニタロウは、とうさんオニに会わせるときだけ、だれかにコブンになってもらおうと考えます。
そんなわけで、ひとつ山を越えたところの町にある「たけのこえん」にオニタロウからの挑戦状が届きます。そこには、「おれさまは、わがままで悪いこどもが大すきだ。相撲で勝負して勝てなければ、おれさまのコブンになれ。まっていろ。〜鬼の親分より」と書いてありました。子どもたちは大騒ぎ。オニがやってくる日まで、相撲の練習をしたり、作戦を練ったり、お豆を準備したりと頑張ります。
さて、オニタロウは人間の子どもたちを無事にコブンにできるのでしょうか?
お話を描いたのは、ユーモアと温かさあふれる絵本や童話を生み出されている作家のこさかまさみさん。ページ数は100ページと読み応えがありますが、お話の内容は5歳ぐらいから楽しめるでしょう。6章に分かれているので、1章ずつ読んであげるのもいいですね。元々はコブンなんて欲しいと思っていないオニタロウが、カラスのカースケと一緒にコブンについてあれこれ考えます。お話の中に出てくる「ぼくたち、ともだちだよ。そんな、コブンになんてならなくってもいいだろ」「そういえば、オニのコブンって、どんなことするの?」という言葉などから、コブンと友だちってどう違うのかを考えるきっかけにもなりそうです。
また北村人さんが描く気の弱そうなオニタロウの姿がとっても魅力的! 表紙をはじめ、どのページのオニタロウを見ても、優しそうでとっても愛らしいのです。お話を読んだ後は、きっとみんなオニタロウのことが好きになってしまうはず。
一方、たけのこえんの子どもたちのとってものびのびとした元気な様子にも楽しさがいっぱいです。後ろ見返しに描かれているひとりひとりのコブン? の愛らしい姿にもご注目下さいね。
2021年に誕生した『オニタロウ』のお話、この後長く子どもたちの友だちとなってくれることでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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