月曜日、道をとぼとぼ歩いているのはバジ。なぜなら、金曜日は苦手な歌のテスト。みんなの前で歌わなくてはならないのが、憂鬱でたまらないのです。そんな時、バジは赤いボールを拾います。そして「時間をすすめることができる不思議なボールの話」を思い出し、考えるのです。
「もしかして、これがそのボールだったらいいのにな」
ところが、バジがためしに「すすめ!」と言ってみると、空がさあっと明るくなり……。もしかして、本物!? だとすると……。さあ、次の日からバジの葛藤が始まります。だって、嫌なことがあれば、このボールを使って時間を進めてしまえばいいわけですからね。歌のテストだって、あっという間です。バジはボールを使うのでしょうか。
「第10回武井武雄記念日本童画大賞」絵本部門大賞受賞をしたこの作品。スリリングな魔法の場面が展開されていくのかと思いきや、物語の中心となるのは、ほとんどがバジの迷う心の中。ところが読者は、あっという間にそのお話に引き込まれてしまうのです。バジがボールを使うのか、使わないのか。こんなにドキドキしてしまうなんて!
読み終われば、なんだかすっきりいい気持ち。ぜひ、自分の経験と重ね合わせながら、バジと一緒に金曜日を乗り切ってみてくださいね。優しい雰囲気の絵も、とっても魅力的です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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