青春は、戦いだ。
集団で目立つことの痛み。
その中でも、やりたいことを貫く勇気。
ささいなきっかけで踏み出した一歩はいつしか、仲間と並んで踏みしめる力強い行進に変わり、少年少女をあまりにも広く、自由な場所へと導いていく──
夏休みだっていうのに、中学一年生のツカサは図書委員の仕事で、学校の図書室に通わなければなりませんでした。
校舎建て替え工事の騒音のせいで、利用者もほとんどいないのに……。
うるさい、暑い、めんどくさい!
そのうえ、夏休みの自由課題のことも気がかりで。
そんな中、4人の図書委員メンバーのひとり、ササヤが持ってきたギターをきっかけに、ふとした思いつきが生まれます。それは、図書委員のメンバー四人でバンドを組み、作った歌を自由課題として提出すること!
ギターが弾けるササヤ。
ピアノがうまいミキ。
歌うのが好きなカノ。
でも俺は、楽器もできないし、歌も得意じゃない……。
そんなツカサが任されたのは──作詞!?
「誰かと一緒に、ひとつのものをつくっている。
仲間に加わっている。
初めて経験するような感覚がぞわぞわと湧き上がって、頭から足の先まで染まっていく。冷房がついた部屋にいるのに汗が出てくる。
はずかしくて、苦しくて、うれしくて、楽しい」
仲間といっしょに、この世界にはなかった、あたらしいモノをつくり出す。
なんだか、フワフワした心持ち。
たよりなくて、でも、エネルギッシュな。
はじめは、恐る恐る。
でも、図書委員の四人は少しずつ、歌づくりに熱中していきます。
「音楽を聴くのは好きだ。好きな音はいつでも自分の外側で鳴ってて、それを見つけ出すのが楽しいと思ってた。
でも、本当に? どこまでが内側で、どこからが外側なんだろう。
疑問がふわりと生まれてはまたふわりと消えていく。ただ、みんなで歌ってる。その中に紛れもなく俺がいる」
そのひと夏をかけて、一曲の歌を完成させたツカサたち。
ところが、その歌を動画サイトにアップロードしたことにより、事態は思わぬ方向に……。
初めて何かを表現することにいどむ、その不安や高揚。
それを生々しいほどのリアリティで描き出した一冊です。
スポーツにかける青春がある。
恋に燃える青春がある。
でもここにあるのは、表現するということに挑み、自分が好きなものを貫くために戦う、そんな青春です!
「この世界にはすでに数えきれないほどの音楽があって、そこから自分にぴたりと合うものをひとつ、またひとつと見つけ出せたとき、いつだって幸せな気分になった。今もなる、なるんだけど。たぶん俺はもう、それだけじゃもの足りない。
ここに生きてる俺の気持ちを、才能ある誰かが代わりに表現してくれることに、悔しさを感じはじめてる」
青春の痛み──
その傷は、だけど熱くて、いつも甘い。
音楽や歌だけじゃない、絵でも、ダンスでも、文章でも!
何かを表現したいと思うすべての人の心に突き刺さる、激エモ青春物語!
(堀井拓馬 小説家)
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中学1年生の夏休み。図書委員の当番で集まったクラスも部活もバラバラな4人が結成した夏限定のバンドは、4人にとってかけがえのない場所になっていった。
そんな時に突然、幹が「…僕、グループ研究、抜ける」と言い出して……!?
「好きだよ」
鯨井さんは言った。何かに立ち向かうように。
俺と佐々矢をさらに引き寄せて、
「わたしは好きな子たちとバンドを組んだの。それの何がだめ?」
茶色い目はどこかをにらんでいる。校舎か、その上の青い空を。
――本文より。
周りの意見に流されたり、同調したり、人から噂されたり、からかわれたり……。
自分を押し殺しているうちに、自分が本当に好きなもの、大切なものは簡単に消えてしまう。
そんな状況の中、幹が出した答えは……。
『みつきの雪』で第50回児童文芸新人賞を受賞した眞島めいり氏、デビュー二作目。
気持ちが前向きになる爽やかな青春ストーリー。
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