ここは山の小さな学校。ハルルさんは給食の先生です。
クミン、シナモン、カルダモン、ターメリック……。
呪文のような言葉を唱えているハルルさんの周りを、子どもたちが取り囲みます。実はハルルさんはカレーの仕込みの真っ最中。いろんな種類のスパイスを混ぜ合わせているところでした。子どもたちは興味津々。ハルルさんのカレー作りの秘伝を教わることになります。
19種類のスパイスを混ぜ合わせ、ニンニクと生姜を細かくきり、小麦粉と炒めてぴかぴかのカレールウを作ります。なかなか出来上がらないカレールウに、子どもたちは疲れてしまいますが、ハルルさんは「みんなのえがおをおもいうかべて おいしくなぁれ おいしくなぁれとつくること」とみんなを励まします。
実はハルルさんにはモデルがいます。北海道置戸町で約40年間給食を作り、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された佐々木十美さんです。十美さんは、初めからカレーのルウを手作りしていたわけではありません。数十年前に「狂牛病」が発生し、それまでカレールウに含まれていた「牛エキス」が使用禁止になり、安心・安全でおいしいものを子どもたちに届けたいという思いから、カレールウを手作りするに至りました。
作者のすずきももさんは、取材を通じて十美さんの「食」に対する情熱に触れ、十美さんをモデルにした絵本を作りたいと思ったそうです。
最後はみんなでカレーパーティ。「からーい!」「おいしい!」とうれしい声が上がります。スパイスのいい香りとともに、子どもたちへの愛と、おいしいものを食べる幸福感がたっぷりと味わえる作品。ぜひ子どもも大人もいっしょに、この幸せなシーンをたっぷりと堪能してくださいね。
(出合聡美 絵本ナビライター)
続きを読む