「木になろう!すっくと立って、お日さまにむかい、えだをつきだせ」
見開き画面いっぱいに描かれた大きな木。大地に根をはり、空に向かって力強く立つその姿は、私たちに雄弁に語りかけます。
みなさんは木が会話をするのをご存知でしょうか?
実は、木々たちが根っこの菌根菌をとおして会話をすること(ウッド・ワイド・ウェブ)が近年、知られてきました。木々たちは土の下に隠された通信網をもっていて、互いにコミュニケーションをとっているというのです。本書は、そんな自然が生み出した驚くべきしくみを、美しいイラストと短い言葉で、分かりやすく伝えてくれます。
イラストを描くのは、『せかいでさいしょのポテトチップス』や『ライラックどおりのおひるごはん』(共にBL出版)など、日本でも注目を集める絵本作家フェリシタ・サラ。穏やかな色合いのおしゃれなイラストは、子どもだけでなく大人の目も楽しませてくれます。左右にさらに広げた観音開きのページは、人々が木のそばで憩うシーンをワイドに映し出し、とても見応えがあります。
森の木々たちは、身を守るために大切な情報を知らせ合い、栄養を分け合い、若い木や弱った木を守ります。これは人間社会に例えることもできそう。まるで家族や地域のように、互いに助け合って、一緒にいることでより強くなるのです。
「樹木を守るためにできること」さらには「森がしているように、社会を守るためにできること」を考えるきっかけにもなる作品です。子どもも大人も一緒に読んで、語り合ってはいかがでしょうか?
「みんなでいっしょに木になろう!」
(出合聡美 絵本ナビライター)
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