ある夏の日、母親に置き去りにされた5歳のハルくん。わたしの家に引き取られた彼には、障がいがあった。空気を読めない。人の気持ちもわからない。でも、わたしはどうだろう。本当に、人の気持ちがわかっているのだろうか―。
深い群青色の表紙、地球儀を抱えた物憂げな表情、そして、この題名。
主人公は、自閉スペクトラム症のハルくん。
そのハルくんを巡るエピソードを、本人、いとこのひより、おじいちゃんの視点で語ります。
みんなの気持ちが浮かび上がってきて、あちこちに共感ポイント。
ハルくんが、かわいそうな存在でないところが素敵。
彼だからこそ、みんなの気持ちが浮かび上がるのですね。
登場人物も興味深いですし、多角的な視点で物語に深みがあります。
ひよりちゃんの気持ち、いっぱい伝わりました。
よくありますよね、親切の空回り。
でも、これ、大事な気付きだと思います。
とにかく頑張り屋さんなので、心の中でずっと応援していました。
おじいちゃん、いるいる、こんな高齢男性。
あの、『あしたも、さんかく』のおじいちゃんにも似て。
イタイ行動の数々にも関わらず、意外な一面のおかげで救われる、
まさに落語的な着地。
ひよりちゃんの親友、木元さんの関西弁、「言葉がほんわりとやわらかい」の評にほっこり。
そうそう、『紳士とオバケ氏』も読みました。
親友になるくだりとか、リンクしていますね。
ハルくんが、保育園児で『たまごのなかにいるのはだあれ?』を愛読しているのにびっくり。
なかなかの科学絵本という認識でしたが、確かに親子の絆を感じられますね。
たまごがキーワードというのにも納得。
ハルくんのお母さん、しんどかったんでしょうね。
でも、「たいせつ」エピソードなど、ちゃんとハルくんへの愛情も垣間見えて嬉しかったです。
ハルくんの「あんしん」、受け止めましたよ。
そう、みんなみんな、懸命に生きていて、不器用かもしれないけど、愛おしい存在。
そう思えるのも、落語的世界観でしょうか。
余韻の残る、早々うまくいかない展開にも拍手。
そう、これからも続く物語。
ハルくん、ありがとう! (レイラさん 50代・ママ 男の子30歳、男の子27歳)
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