
祖母の葬式が終わり、家族で祖父の生家に向かった天宇(読み:たう)。母屋の蔵で、祖父が十代のころに書いた手記を見つけた。中学生だった祖父に興味をもち、「開くなら、あそこがいいな」と、町を見下ろす休憩所にやってきた。そこで出会った女性に「わたしがあなたなら、読むかもしれません」と、背中を押された天宇。 昭和二十六年八月と記された表紙が風でめくれると、こう書かれていた。 「あれから六年がたった。 ……できるだけ正しく、あの年のことを記しておきたい。 だからまず、あの人との出会いを書かなければならない──」

祖母の葬式に行って、祖父が少年時代に体験した戦争を掘り起こしていく物語です。
広島原爆との関わって、時代に振り回された祖父の歴史を、同じ年代として体感する所に、過去と現在がつながったような気になりました。
恋心や現在につながる線も加わって、今を生きる少女とも関連性を表現しました。
ミステリアスな要素、絡み合う人間関係、長編ではない物語をとても味わい深いものにしていると思います。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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