「言葉に関する行動では、脳の前頭連合野が活性化する」という事実に基づいて立てられた「読み聞かせをしてもらう子どもの前頭連合野は活動しているにちがいない」という仮説。それに反し、読み聞かせをされる子どもの脳では、深くにある“心の脳”に活動が見つかりました。
心の脳とは、脳の奥にある辺縁系という部位を、著者が言い換えた言葉です。その役割は、喜怒哀楽をただ感じるのではなく、こわい・悲しいことの意味がしっかりわかる(つまり、しつけで社会性が身につく)、うれしい・楽しいことの意味がしっかりわかる(つまり、ほめられてやる気になる)、ということです。つまり、わが身を「たくましく生かしていく」心の脳を育てることを担うのが、読み聞かせなのです。
人間の成長から見れば、まずは心の脳がしっかり育つことが大切です。やがてそれを土台に、私たちを人間たらしめる三つの連合野がある、大脳新皮質がつくられるからです。自分で音読できるようになると、もっとも大切な前頭連合野が活性化し、発達していきます。乳幼児のころにたくさんの読み聞かせを楽しみ、小学校にあがると文字を学んで音読するようになる――その意味を、脳科学の研究が示しているのです。
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