言わずと知れた名作ですが、わかやまけんさんの絵で読んだのは初めてでした。あの「しろくまちゃん」や「こぐまちゃん」シリーズのわかやまけんさんとはなかなか結びつきませんが、本当に温かい絵で、お母さんのやさしさやこぎつねの純粋さがひしひしと伝わってきます。
特に、かあさんぎつねが、こぎつねの手に、はあっと息をふきかけながら、「ぬくとい かあさんの手で、やんわりつつんで」あげている絵が、母親の愛情にあふれていて大好きです。文章も、美しい日本語でつづられていて、心にすっとしみこんでくるようです。
娘は、こぎつねが、かあさんぎつねに教えられたのとは反対の手を差し出してしまった場面で、「違うよ!そっちの手じゃないよ!」と、一生懸命こぎつねに向かって声をかけていました。そして、帽子屋さんから手袋をもらい、「にんげんは、ちっともおそろしくないや」と思ったこぎつねが、人間がどんなものなのか見てみたいと、町を歩き始めてからもずっと、「あっ!」と声を上げたり、両手で顔を覆ったり、立ち上がったり、私の後ろに隠れたり・・・と、どきどき、びくびくしながら、こぎつねの言動を見守っていました。
「もしJが帽子屋さんだったらどうする?」と聞いてみると、「こぎつねをだっこしてあげる」と娘。
「それならきっとこぎつねも、とっても優しい人間の女の子だったよ、ってお母さんに教えてあげるだろうね。」と言うと、「うん、それで、今度は、お母さんも、こぎつねのパパも、弟も、いっしょに連れて来ると思う!」と、かわいらしい答えが返ってきました。
かあさんぎつねが最後に「ほんとうに にんげんは、いいものかしら。ほんとうに にんげんは、いいものかしら」とつぶやく言葉には、本当に考えさせられますね。
娘は、「こぎつねは、まだちっちゃいから、わからないんだよ。」と言い、お母さんの心配も理解できるようになったのと同時に、人間の悪の部分もわかりかけてきたんだなと、複雑な気持ちがしました。
特に、現代社会では、子どもが犠牲になる事件も多発していて、動物のお母さんでなくても、「人間はこわい」と教えなければならないことがたくさんありますものね。「みんないい人ばかりだから、安心していていいよ」と、子どもに自信をもって言えたらどんなにいいでしょう。