「私、作る人。僕、食べる人」という食品メーカーのCMが男女差別になると放送中止になったことがありました。1975年頃のことです。
さすがにそういうことを今だに言う人はいないのではないでしょうか。
むしろ、「僕」という人称語で呼ばれる男性で料理をしないという人の方が減ってきたような気がします。
煙草を吸わない、子育ての積極的に参加、そして料理がうまい。
そのあたりが今のカッコいい男性像ではないかしら。
実はこの絵本の奧付を読むと、初版が1976年とあります。
まさに冒頭のCMが問題になっていた頃です。
そのなかにあって、お父さんの料理する姿をユーモラスに描いた作品を描いたのですから、作者のさとう・わきこさんの先見の明には感心します。
なにしろ、この絵本でも最初は料理を作ろうとするおとうさんを嫌がって、お鍋やフライパン、それにじゃがいもやたまねぎの食材も逃げ出してしまうくらいです。
それらをつかまえるために、おとうさんの「とくいの とあみ」というのがいいですね。
今の子どもたちは「投網(とあみ)」そのものを知らないかもしれませんが。
出来上がったカレーライスを食べようとすると、お母さんも子どもたちも「まずそうと逃げ出そうとするのですから、失礼なものです。
お父さんは今度も投網でつかまえます。
食べて、みんなはあまりのおいしさにびっくりです。
このお父さんは今のカッコいいお父さんの先駆けのような人です。
今頃、どんなカッコいいおじいちゃんになっているでしょう。