本書は2008年4月から2009年3月にかけてヒルサイドテラスで開催された、本と同じタイトルのセミナーの内容を書籍化したものです。
書籍化は2010年3月となっています。
そのため、ここには末盛千枝子さんの近年の活動、すなわち東日本大震災後の被災した子どもたちに絵本を届ける「3.11絵本プロジェクトいわて」のことは入っていません。
それはなくても、末盛さんがどのようにして絵本の世界に入っていき、その活動の力を増していったのかは10回のセミナーのなかで気づかされます。
また、この本でいえば巻末についている国際児童図書評議会(IBBY)の元会長を務め、長年末盛さんと活動をともにしてきた嶋多代さんの「末盛千枝子の仕事について」に、詳しく書かれているので、それがとても参考になります。
ただタイトルのわりにはたくさんの絵本が紹介されているわけではありません。
特に私たちになじみの日本の絵本はほとんど出てきません。
あるのはタシャ・チューダーやエリック・カール、M・B・ゴフスタインといった海外の絵本作家のことや末盛さんと同じ絵本編集者の話です。
それでもその底流にあるのは、末盛さんがいかに本を大切にしてきたかということだと思います。
それがよくわかる文章があります。
「本は子どもにとっても、大人にとっても、もちろん老人にとっても、さまざまな意味で、美しい宝の山だと思います。」
そういう末盛さんだからこそ、語れた本の世界がここにはあります。