揺れ動く三人三様の思春期を、『小公女』を素地に描く。 
不登校だったり、放任?だったり、片親だったり。でもそれを大々的に告知しているわけではなく、あくまでも心の背景として描いてある。 
老人に絡ませる作品はよくあるが、こういう夢というか抽象的な部分を利用したのは珍しい。 
じいさんパートが一瞬(良い意味で)なんのことかわからなかった。 
最初から話は読めるが、どこへ終着するのかが楽しみだった。 
伏線が多くて、後半より合わせていくところに飽きもきたが、三人の他の脇役にも前進があって、みんながひとつの季節を過ごした感が出て、いいところに終着したと思う。 
作者の代表作として『十一月の扉』『時計坂の家』とあるが、後者寄りかな。 
『十一月の扉』のように、じっくり一人の心情に乗り移るのではなく、三人それぞれの思いや成長(というより一歩)を、年配のいろんな人や出来事の中で手繰っていく感じ。 
三人が、娘やその友達に思えて仕方なかった。ヤングアダルトが読んで共感するだろうか。大人向け、いや親向けのような。