勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語」 夏の雨さんの声

勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語 文:梯 久美子
出版社:フレーベル館 フレーベル館の特集ページがあります!
税込価格:\1,320
発行日:2015年10月08日
ISBN:9784577043059
評価スコア 4.5
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  • なんのために生まれて

     まんが家やなせたかしさんが亡くなったのは2013年10月13日。享年94歳。
     こんな話を聞いたことがあります。
     『アンパンマン』のあんこって、粒餡なのかこし餡なのか。答えは、粒餡というのが絵本・児童書の出版社フレーベル館ではいきわたっているそうです。理由は、やなせさんがこし餡が嫌いだったとか。
     でも、アンパンマンのあんこには粒粒が描かれていないから、こし餡ではないのかと思ってしまいますが。
     やなせさんがいなくなっては、永遠の謎かもしれません。

     アンパンマンのもととなる『あんぱんまん』がフレーベル館から出版されたのは1976年です。もう40年近く前のことです。元々ひらがな表記の名前でした。手も現在とちがってきちんと五本指で描かれています。やなせさんが57歳の時です。
     この本は、やなせさんの伝記です。
     児童向けに書かれていますから、漢字にはルビもふられています。アンパンマンが大好きな子供たちが少し長い文章も読めるようになれば、その作者のことを知るのに、とてもわかりやすく書かれています。
     何故なら、著者の梯久美子さんは一時期やなせさんが編集長をしていた雑誌「詩とメルヘン」の編集者として働いていたことがあるからです。
     きっと仕事中のやなせさんの姿をそばで見ていたと思いますから、たくさんのエピソードがあると思います。けれど、この本はやなせさんの側面を語る場ではないことを、梯さん自身がよくわかっていたのだと思います。
     読者である子どもたちにやなせさんが信じていたこと、願っていたことをどう伝えるのか。
     あるいは、アンパンマンというヒーローを生みだしたやなせたかしという人はどんな人であったのか、子どもたちが読みやすい内容と長さで、どう伝えていくかが梯さんの試みだったと思います。

     それにしても、アニメになったアンパンマンのテーマソングはなんと深いのでしょう。
     この本の中でもそれはきちんと述べられています。
     やなせたかしさんの願いは、ここには過不足なくうたわれています。だから、東日本大震災のあと、多くの人たちの心に届いたのではないでしょうか。

    投稿日:2015/11/20

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