なんとも意味深なデッサン集です。
ブリュッセルの裁判所に長年通い続けて、バンサンはそこで出会う人々の表情や仕草を描き続けていたのでしょうか。
裁判所が絞首刑台の丘に建てられているとの解説を見て、身がすくみました。
裁判では、そこにいる様々な人のそれぞれの思惑が混在しています。
それぞれの人の、裁判に対する思いが、自分のストーリーを形描いています。
表情からどのような心情を読み取るかは、人によって差異があるでしょう。
こう思っているなどと語ってしまったら、そこからブレを生じるかもしれません。
そう考えると、何も語らないバンサンの絵は、全方向に向かって雄弁です。
あえて篩にかけず、ありのままを描くことで、重厚な冊子になったのでしょう。
どんなストーリーをすくい上げるかは、読者に任されているようです。