古代エジプトの人々はなぜミイラを作ったのか。巨大なピラミッドは何のために。そんな素朴な疑問が、物語を読むうちに一本の線で繋がっていくような知的な興奮を親子で味わいました。
この絵本は、彼らの全ての文化が「死と再生」という壮大な世界観に基づいていることを見事に解き明かしてくれます。死後の過酷な旅路を守るためにミイラや「死者の書」が必要だったという背景がすとんと胸に落ち、まさにこの死生観こそが、古代エジプトの文化と芸術を理解する上での「おへそ(=中心)」なのだと深く納得しました。
また、「死者の書」の緻密な絵や壁画に描かれた五千年前の豊かな暮らしの様子は、芸術的な魅力にも満ちています。古代エジプトが、ただミステリアスなだけでなく、活気あふれる人間の営みの場であったことを、色鮮やかなイラストを通して実感させてくれました。
難解になりがちなテーマを、子どもの知的好奇心を刺激する「謎解き」として構成した一冊です。「美のおへそ」という名の通り、遠い文明の核心に触れ、歴史を探求する楽しさの扉を開けてくれるアートブックでした。