「やあ ひさしぶり」
また会えました、たまごです。今度のたまごは、新しいことをしたくなり、「し」を書いてみることにしたようです。
はじめて完成させた「し」をマシュマロに聞かせてみると、マシュマロから朗読会に出ることを勧められ、たまごはみんなの前で「し」を朗読します。すると頼んでもいないのに、みんなが勝手に感想を言いはじめ……。
第27回日本絵本賞大賞、第28回ブラチスラバ世界絵本原画展金牌など数々の賞を受賞し、話題となったしおたにまみこさんの絵童話『たまごのはなし』に続き、少し成長したたまごが再び登場するこの物語。
「し」を書き、それをみんなの前で朗読する。そんなアグレッシブな姿を見せてくれるたまごですが、すんなり上手くはいかないようです。最初の朗読会では、思いもよらず、自分より次に朗読したボーロの「し」がみんなに褒められたのです。褒められすぎて嫌いになるほど。
それでも、そのままお腹がむかむかするよりは、みんなが夢中になる「し」をつくった方がすっきりするかもしれないと、再び挑戦するたまご。すると今度は、自分の出番になった途端、頭がまっしろになり、声も出なくなってしまったのです!
いったい何が起こっているというのでしょう。自分が経験したことのない“初めての気持ち”を味わうたまご。その感情や行動に名前をつけるとしたら、「嫉妬、緊張、逃げる」でしょうか。その一部始終を、変わらず静謐で美しい鉛筆画で愛らしくユーモラスに、それでいて切れ味も鋭く描きだします。
なんだか誰かのお腹の中をのぞき見してしまったような、ちょっとした気まずさを感じながら、でも一方で爽快な面白さも感じてしまうのは、きっと誰もが心の中に持っている“ないしょ”の部分を見せてくれているからでしょうね。たまご、ありがたい存在です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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