町中に、ポツンとたたずむ、古い駄菓子屋。
そこには、ふたりのおばあさんが住んでいました。
ひとりは店主の、はるばあさん。もうひとりは猫の、ミケばあちゃん。
だけどミケばあちゃんは、ただの猫でもなければ、ただのおばあさんでもありません。
夜になると布団を抜け出し、駄菓子屋の床下にある仕事場に向かう、彼女の正体は「おなおしや」さん!
ミケばあちゃんはおもちゃと話すことができ、壊れてしまったおもちゃを直す、たよれるおもちゃの味方です。
おもちゃとはいっても、ミケばあちゃんが直すのは、光ったり、音が出たりするものではなく、昔なつかしいおもちゃ。
ひしゃげたメンコに、やぶけたお手玉、それに、穴の空いた凧。みんな、いつかまた子どもたちに遊んでもらいたいと願って、ミケばあちゃんの元をたずねます。
そんなある日のこと、ミケばあちゃんは、はるばあさんが話しているのを聞いてびっくり!
「この みせも ふるくなったし、
こどもたちも あまり こないし。
もう やめようかと おもってましてねえ」
古くなったからって、駄菓子屋をやめてしまうなんて!
元気のなくなったミケばあちゃんを見て、おもちゃたちは駄菓子屋に子どもたちを呼び寄せる作戦を決行しますが──?
歳をとったせいか、ふっくらぽっちゃり。目つきはするどいのに、なぜか視線はやわらかな、ミケばあちゃん。すこしおっくうそうに仕事場に座り込み、ちょいとメガネを引っ掛けて、針をついつい、のりをぺたぺた。手仕事で黙々とおもちゃたちを直していくミケばあちゃんの、みょうに人間くさい仕草がなんともおかしく、かわいいみどころです。
しかもミケばあちゃん、駄菓子屋の猫なのに、人間の子どもが苦手! せっかくおもちゃたちが子どもを呼びもどそうとがんばっているのに、かわいいかわいいと子どもたちに構われるのに耐えきれなくなり、シャー!っと威嚇して子どもを追い払ってしまうしまつ。おもちゃを直す手は器用なのに、びっくりするほど不器用な一面のあるミケばあちゃんです。
駄菓子屋に、昔のおもちゃ、そして三毛猫。人間に隠れてこっそり古いおもちゃを直す猫、という童話的なアイデアで、昭和レトロな世界をロマンたっぷりに描き出しています。
(堀井拓馬 小説家)
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