「ねえ、おぼえてる? パパと3人で、野原へピクニックにいったときのこと」
明かりを消したあとのベッドでかわされる母と子の親密な会話。
喜びと痛みをともなう思い出を受けとめて、新しい人生を歩みはじめる2人をてらす朝の光。
絵本の可能性をきりひらく作品で、世界から注目を集めるシドニー・スミスが、自らの子ども時代の体験を3年がかりで描いた、心ゆさぶる絵本。
何度も何度も読み返して、シドニー・スミスにとってこの作品がどのような位置にあるのかを考えました。
「ねえ、おぼえてる?」と言いつつ、自らの記憶を掘り起こしていく作品です。
父親との別れは、どういったことだったのでしょう。
母親と二人、ベッドの中で思い出すのは父親も含めた楽しい時間です。
父親から渡されたくまのぬいぐるみとともに、母親と少年はビルだらけの街に引っ越してきました。
そして新しい生活の夜を過ごし、朝を迎えるのです。
この朝の気持ちを忘れていないから、二人は思い出とともに生きてきたのでしょう。
映画のラストシーンのような、野辺を歩く母親と少年の姿に、また読み返さずにいられない絵本です。
別れはあっても、これからを生きようと前を向いた、そして生きてきた姿の描かれた絵本です。
完成までに長い歳月を要した作品だと語られています。
その歳月の間、シドニー・スミスは自分自身と向き合ってきたのでしょう。
心揺さぶられる作品です。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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