フランスのラスコー洞窟の壁画は、約17000年前の旧石器時代に描かれた、人類最初の絵画と言われています。この驚くべき大発見をしたのは、学者ではなく、なんと少年たちだったそうなのです!
1940年、フランス南部の町モンティニャックに住む14歳のジャックは、友だちとともに、昔、貴族が隠したという宝探しをしていました。少年たちは、偶然発見した木の根もとにある深い穴にもぐり、探検をします。そこで見つけたのは、壁に赤く塗られた巨大な牛をはじめとする、ダイナミックで力強いたくさんの動物たちや、奇妙な人間の絵でした――。
本当にあったお話だなんて信じられないくらい、ドキドキする冒険がくりひろげられます。自分ならこういうときどうするか、と真剣に考えながら、ぐぐっと絵本の世界に入り込みました。闇の暗さ、空気の重さ、ロープをつたって降りなければならない深さ、狭かったり広かったりする通路、ランプの光に照らしだされた太古に描かれた絵画の数々。迫力あふれる絵で展開する少年たちの洞窟探検の様子は、まるで映画を見ているようなリアルさでせまってきます。
絵を描く道具や染料は、どうしたんだろう? 洞窟の絵や少年たちはそのあとどうなったの? など、物語を読み終わったあとも、数々の疑問が頭の中をぐるぐるまわります。それをていねいに説明してくれる作者あとがきは、読みごたえたっぷり。文字が多くて、ちょっと難しいかなと思うかもしれませんが、ぜひ読んでみてください。
実は、1940年のフランスは、第二次世界大戦の最中で、パリはドイツに占領されていました。世界的な発見の喜びもつかの間、戦争のために閉鎖された洞窟や、少年たちをめぐる状況のシビアさなど、歴史の波の雄大さと厳しさを同時に思い知らされます。
もっともっと歴史を知りたい! という思いに駆られるのは、私だけではないはず。小学校中学年くらいの読者から、大人まで魅了する1冊です。
(光森優子 編集者・ライター)
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