確かに、ここに一人で座っているのは、ただの男の子。だけどアントニオは、見た目よりずっとすごいんだ。だってね……
ママとパパといる時は、二人を喜ばせたり、わがままを言ったり、時には家出をするふりをする「息子」になる。おばあちゃんといる時は「孫」、マチルダおばさんといる時は「甥っ子」。当然その子どもたちと遊んでいる時は「いとこ」だね。
学校にいけば「生徒」になるし、図書室に行けばアントニオは「本の虫」にもなる。黄色いタコの水泳パンツをはいている時の自分は「見られたい」って思うし、時々バスの乗客になるのを「やめる」ことだってできる。家族の前では作家や役者になることだってある。
アントニオは、なんにだってなれるのだ。心も体も自由! 誰もしばりつけることなんてできないんだ。だけどね。どんなアントニオだったとしても、ぼくにとってはいつでも大切な……。
一人の普通の男の子を中心に、中へ外へと自由に広がっていくその世界は、とてもキラキラと眩しくて。だけど、その生き生きとした姿を見ていると、誰もが持っているであろう無限の可能性を信じずにはいられなくなるのです。そう、この絵本を読んでいる自分にも、あなたにも。
第26 回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)最優秀翻訳大賞を受賞したこの作品、初邦訳となる著者なのだそう。自分の中を見つめるだけでなく、その先の表現する力にまでつなげていってくれるような、子どもたちには大切なきっかけとなってくれるであろう一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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第26 回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)最優秀翻訳大賞受賞作!
アントニオってすごいんだ。みためは ただの男の子なんだけど なんにだってなれる…
子どもの自由なこころとからだを 生き生きとした文と絵でつづる。ボローニャ国際絵本原画展に入選した注目のイラストレーターの絵本。
推薦! 金原瑞人氏(翻訳家・法政大学教授)
「アントニオは、きみだよ」
なんで? とたずねられて、どう答えるか。
そこが問われている絵本ですね、これは。
ーーというと、難しそうですが、答えは簡単。
「もう一度いっしょに読んでみようよ、わかるから」
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