ある日曜日のこと。道のはしっこに、「クッキー屋」と書かれている小さな屋台が出ていました。店先にはひとつずつとうめいなセロファンで包まれたクッキーがあふれそうなほど置かれています。バタークッキーに、チョコクッキー、いちご味やナッツ入り‥‥‥。なんて美味しそうなんでしょう。
しかも「ひとつ百円」ですから、さっそく買ってみたくなりますよね。
でも、ちょっと待って。
お店にいるおばあさんは、実はなみだのクッキーを魔法で作って、町中に広めようとしている悪い魔女。そのクッキーを食べたら不幸な気持ちになって、なみだが出るというのです。
なみだのクッキーの完成まではもう少しで、あと必要なものは、人間の悲しいとかくやしいという気持ちでした。
そんな魔女のクッキー屋に、おこっている女の子がやってきます。
名前はリコ。話を聞いてみると、おかし屋さんをしているおばあちゃんが忙しくて相手をしてくれず、さみしい思いをしているといいます。魔女は、早速、そのおばあちゃんにリコが感じている「悲しくて、さみしくて‥‥‥おこっている」気持ちを同じように味わわせてあげたらいい、とリコになみだのクッキーをすすめます。
すすめられるがままに、なみだのクッキーをひとつ受け取って、おばあちゃんのお店に行ったリコでしたが、はたしてリコとおばあちゃんはどうなってしまうのでしょうか。
一方、リコとおばあちゃんの様子を視察しに行ったカラスの帰りが遅いので、自分でおかし屋をのぞきに行った魔女。お店から出てきたおばあちゃんを見て、魔女はびっくり。出てきたのは、魔女がまだ見習いだったころに一緒にクッキーを作ったり、魔女のことを「友だち」と言ってくれた唯一の人間の友だち、あのアイちゃんではないですか!
(このアイちゃんと魔女の子どもの頃の話が気になったら、『魔女みならいのキク』も合わせて読んでみてくださいね)
『魔女ののろいアメ』『魔女のいじわるラムネ』『魔女のうらないグミ』につづく、おかしで人間を不幸にしようとたくらむ魔女のおかしやさんのお話。いつも人間を不幸にしてやろうと企みながらも、思い通りにいかなかったり、悪い魔女になりきれない様子がなんだかおかしくて、親しみを感じてしまうほど。
さらにこのお話の大きな魅力は、不幸なお菓子の作り方。今回もビーズのようにキラキラしたピンク色と水色と黄色の小さな丸いつぶでクッキーを飾りつけるのですが、とても不幸なクッキーを作る材料だとは思えないほど作る工程が楽しそうなんです。これは子どもたちを惹き込むための魔女の作戦なのでしょうか?
草野あきこさんの続きが気になってどんどん読めてしまうストーリーに、全ページに描かれるひがしちからさんのユーモアあふれる挿絵で、本が苦手という子でも、一冊読み通せてしまうはず。なにか面白い本はないかなあ? と探している子どもたちにぜひ手渡してあげてくださいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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ある日曜日のこと。道のはしっこに、小さな屋台がひとつ出ていました。屋根には「クッキー屋」と書かれています。屋台をやっていたのは、「この町の人間たちを、なみだのクッキーで不幸にしよう」とたくらんでる魔女でした。そこへ、文句を言いながら女の子がやってきました。
女の子はリコという名前で、「おばあちゃんはおかし屋さんを始めてから忙しくなって、リコの話を聞いてくれなくなった」と怒っています。そこで魔女は、「なみだのクッキー」を作るよう、リコにすすめました。「なみだのクッキー」は、クッキーにカラフルな粒をまぶして、怒りや悲しみなどの不幸な気持ちをこめて振るとできるクッキーです。そして、そのなみだのクッキーを食べると不幸な気持ちになり、なみだが出るというのです。
おばあちゃんのことが嫌いなわけではないリコは、少しためらいますが、なみだのクッキーを作り、おばあちゃんに渡すためおかし屋さんに向かいました。
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