その少女が何より大好きだったのは、色を集めること。
レモン色の家から引っ越すと決まった時は、仲良しだったその色をポケットにつめ、新しい家に向かう途中で通りかかった砂漠の茶色、カルフォルニアの海の水色、町の建物のねずみ色、空のサンゴ色を見つけ、それらをみんなとっておくのです。ここぞ!という時のために。
やがて少女は大人になり、絵を学んだ後、働くことになります。
そこはなんと、ウォルト・ディズニー・スタジオ!
そう、彼女はスタジオではじめて雇われた女性、メアリー・ブレアです。
いよいよ、メアリーが心の中に集め続けてきた色が自由にかけまわる時がきたのです。
ところがそこは…。
メアリー・ブレアという名前を聞いてすぐにピンと来ない方でも、「イッツ・ア・スモールワールド」をデザインしたアーティストと聞けば、すぐにそのセンスと才能の素晴らしさを思い浮かべることが出来るでしょう。お話の中にもある通り、メアリーの才能は会社に入ってすぐに生かされた訳ではありませんでした。それでも彼女が特別だったのは、誰よりもウォルト・ディズニー本人に絶大な支持を受けていたのです。世界を旅して、他の仕事も経験し、やがてその集大成として取り掛かったのが「イッツ・ア・スモールワールド」のデザインだったのです!
彼女の伝記としてこの絵本を読みながら味わうことが出来るのは、色を自由に奔放に扱うことのできる魔法使いメアリー・ブレアの魅力。 早すぎた時代を生き、それでも今もなお彼女の残した作品の数々に虜になってしまう私たち。その様子をこれまたドキドキするほど素晴らしいイラストで味わうことのできる、贅沢な1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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