ある夏の日。
一人で暮らすバイオリン弾きのおじいさんのもとに、一匹のミツバチがやってきました。
おしりの黒い線の一本がなぜか銀色なので、名前は「ぎん」。
ぎんがはげしく羽を震わしたその音は、バイオリンの音にそっくりなのです。
ぎんは言いました。
「この くさはらの はなが かれるころ
わたしの いのちも おわりです。
たいせつな みつを くれた はなたちに
おれいの おんがくを おくりたいのです」
ぎんは、花たちのために演奏する曲を学ぶため、
天気のいい日は毎日バイオリン弾きのもとに通いました。
演奏する曲に耳を傾けて、ときどき曲に合わせて羽を動かし、音を鳴らして…。
そこには、信頼に満ちた幸せな時間が流れていました。
しかし、突然ぎんが姿を見せなくなりました。
心配になったバイオリン弾きが、ぎんを探して雑木林の奥で見たものは――
大きな喪失を伴う悲しい物語に、大人も子どもも、きっと心揺さぶられることでしょう。
大切な人を失う喪失感、
志半ばで命が尽きてしまう無念さ…。
とても悲しみの大きい物語なのに、読み終わった後、不思議と心が温かくなるのはきっと、
おぐらひろかずさんが描く絵に、光があふれているから…。
タイトルの「ミツバチぎんのおくりもの」にある、ぎんがくれた「おくりもの」って何だったんだろう?と、話し合ってみるのもいいかもしれません。
(洪愛舜 編集者・ライター)
続きを読む