「ここは もりの おくの ほらあなの いえ。
ふゆの あいだ ねむっていた くまの おやこが おきてきたよ。
いえの そとは あかるくて きれいな はなが さいている。
こぐまは さっそく そとへ でていったよ」
切り抜かれた洞穴の口から、外の森と、水色の可憐な花がちらり。
次へページをめくると、明るい森にまさに出ていこうとする子グマの姿が、穴の中に見えます。
さまざまな形の穴あきしかけがいっぱいの、楽しい絵本です。
川ではビーバーが、山では鳥たちが小枝や泥で家をつくっています。
夏の川は、魚たちの家。
ひんやりした地面の下は、だれの家かな?
子グマといっしょに、わくわく、森を探検気分。
「はるも なつも あきも ふゆも
どこかで みんな からだを やすめている。
いえが あるって いいいね」
文は、イギリスで絵本の仕事に携わるパトリシア・ヘガティ。
絵は、哲学的で美しい作品に定評がある、ドイツ生まれのブリッタ・テッケントラップ。
木坂涼さんが親しみのある訳で、読者を絵本の世界へ誘います。
わが家の小学生はひとりで読み終えて「あったかい感じがする」としみじみつぶやいていました。
春から、夏、秋、そしてまた雪が降りはじめる冬へ。
子グマが再び冬眠するまでの一年を描いた絵本。
木坂涼さんが訳したブリッタ・テッケントラップの型抜き絵本には、他に『おなじ そらの したで』『おおきな おおきな 木みたいに』などがあります。
どちらも美しく、それぞれに穴あきしかけのおもしろさを感じられます。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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