いち にの さん!
- 作:
- スギヤマ カナヨ
- 出版社:
- 童心社
絵本紹介
2025.09.26
「いち にの さん! ぼん!」リズミカルな擬音とともに自由に姿をかえていくのは、黄色い「まるちゃん」。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『いち にの さん!』。日本ではじめて出版される「多言語あかちゃん絵本」、いったいどんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
ところが、この絵本。これで終わりではありません。日本ではじめて出版される「多言語あかちゃん絵本」なのです。日本語、中国語、ベトナム語、韓国語、フィリピノ語、ポルトガル語、英語、ネパール語、スペイン語の、9つの言葉で書かれているのです。
とはいえ、リズミカルな擬音とともに自由に姿をかえていく黄色い「まるちゃん」の姿が、文字だらけになって見えなくなってしまうのでは? という心配もしてしまいますよね。
本作では、そのことを逆手にとって、9か国語の文字をデザインによってビジュアルの一部として組み込んでいます。多文化や多様性を象徴するレインボーカラーの文字が、絵とあわさって絵本の展開を盛りあげます。
これは面白い!
一度に全部読めなくたっていいのです。まずは母国語から。そして、気になる文字や、知りたくなった国の言葉を順番に。絵本の巻末には読み方が掲載されており、ホームページでは音声データを聞くこともできます。絵本に造詣が深い各国の一流の翻訳者が翻訳を担当されているのも嬉しいポイントですよね。
この絵本を中心に、様々な国の赤ちゃんや大人たちが輪になって楽しんでいる姿を想像してみてください。「いち にの さん!」でつながっていくコミュニティ。なんだか可能性を感じずにはいられません。
「読める」喜びをかみしめ合って
近年の日本では、日本語を母語としない子ども(大人も)が増えていることは周知の事実です。多文化共生社会の実現に向け、多言語絵本が注目されています。けれど、まだ言葉もわからない赤ちゃんと読む「多言語あかちゃん絵本」、いったいどんな風に楽しめばよいのでしょう。その答えは、体験していく中で見つけていくのかもしれません。「いち にの さん!」を通して、赤ちゃんと大人が、大人と大人が、日本語と他の国の言葉が、通じ合っていく。お互いに「読める」喜びをかみしめ合う。まずは手に取ってみたくなる一冊です。
この書籍を作った人
スギヤマカナヨ/静岡県三島市生まれ。東京学芸大学初等美術家卒業。『ペンギンの本』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。主な著作に『スギャーマ博士の動物図鑑』(絵本館)、『てがみはすてきなおくりもの』(講談社)、『ほんちゃん』(偕成社)、『おやすみとおはようのあいだ』(めくるむ)、「みることば さわれることば 手話えほん 全3巻」(あすなろ書房)、『本はともだち』(子どもの未来社)など多数。手で見る学習絵本「テルミ」編集長。各地の学校や読書関連団体、図書館などと連携しながら、絵本を通じて様々な立場の人同士のコミュニケーション創出に努めている。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。