おくりものはナンニモナイ
- 作・絵:
- パトリック・マクドネル
- 訳:
- 谷川 俊太郎
- 出版社:
- あすなろ書房
絵本紹介
2023.05.23
新年度がスタートして2ヶ月、楽しみにしていたGWもあっという間に終わってしまったような……長い長いコロナ禍を抜け、今年はようやくかつての日常が戻ってきましたね。園や学校生活、家庭も仕事も、これまでの時間を取り戻すかのようにスピードを上げて進んでいる感じがします。見上げれば真っ青な空にあざやかな新緑が気持ちいい5月のはずなのに、飛ばしすぎて心も体もちょっとお疲れモード……なんて日も、ありませんか?
疲れた時は大きく体を伸ばして深呼吸。そして短くてもぜひ自分を癒してあげるひとときを作ってあげて下さいね。例えば、ゆっくりお風呂に入る、ちょっと贅沢なスイーツを大人買い、推し活なんかもいいですね……そして、絵本も!
さまざまな価値観や考えをもった登場人物、現実ではあり得ないようなおはなし、どこか心に刺さるイラスト。さまざまな出会いが詰まった絵本を楽しむ時間は、短い旅にでも出たような充足感をもたらしてくれるはず。 大人の癒しに、手にとってほしい絵本をご紹介します。
この書籍を作った人
1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。
この書籍を作った人
1965年生まれ。東京都出身。『さるの尾はなぜみじかい』『こおにの くもづくり』で2014年Hearts Art in Saitama-色彩と明暗 -にほんのえほん展で金賞受賞。前記作品に『ある はかせ』を加えた三作品で2015年Hearts Art in TOKYOエイズチャリティー美術展公益社団法人東京都医師会賞受賞。IKEの会所属。
この書籍を作った人
1933年アメリカ ロサンゼルス生まれ。高校卒業後ブルックリンの「プラット・インスティテュート」に入学。本のイラストレーションを学ぶ。ポーランド生まれのアニタ・ローベルと出会い結婚。『わたしの庭のバラの花』など、ローベルが文、アニタが作画を担当した絵本も出版されている。『ふたりはともだち』でコルデコット賞次賞と全米図書賞、『ふたりはいっしょ』でニューベリー賞、『どうぶつものがたり』でコルデコット賞を受賞。20世紀アメリカを代表する絵本作家となる。その他の作品に『ふくろうくん』『おはなしばんざい』(以上文化出版局刊)などがある。1987年ニューヨークの病院で他界。
この書籍を作った人
東京都生まれ。詩集『わがキディ・ランド』で高見順賞、『鶸』で芥川賞、童話『ぽたぽた』で野間児童文芸賞、『イヌのヒロシ』で路傍の石文学賞、評伝『北原白秋』で毎日芸術賞など受賞。他の児童向けの本に『おおやさんはねこ』『星のカンタータ』『ほろびた国の旅』『イトウくん』など、翻訳にアーノルド・ローベル『ふたりはいっしょ』などがある。
みどころ
ダニエルは近所の人たちと仲良し。街を歩いていると、みんなが「いい一日をすごしてね!」と声をかけてくれます。「いい一日ってなんだろう?」ダニエルは、おばあちゃんちに歩いて向かいながら、いろんな人に尋ねます。「ねえ、サンチェスさんにとって、いい一日ってなあに?」「おねえさんは、どんなときに、いい一日だって思うの?」
仲良しのサンチェスさんは「空が晴れ渡ってる日」と言い、「だってこんなふうにペンキが塗れるでしょ」と答えます。凧を持っているおねえさんは「穏やかに風が吹いている日」と答えます。ダニエルはお隣のご夫婦にも聞きます。公園で子どもを抱えるシッターさんにも、バスの運転士さんにも……。
それぞれ答えは違うけれどどの人にとっても「いい一日」がある。そして、皆、自分の大切なものが「いい一日」を作っているのだとわかります。おばあちゃんには大好きなダニエルがハグしてくれた今日が「いい一日」なんだってことも……。
世界のささやかなものへの愛が溢れた、美しい絵本。作者のミーシャ・アーチャーは、初めての自作絵本『詩ってなあに?』でエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞。油絵やコラージュを使った技法で、カラフルな作品を作り出しています。
本書で、最後に家に帰ってきたダニエルに、お母さんは尋ねます。「きょうは、どんな一日だった?」 そこで「すっごくいい一日だったよ」とほほ笑みながら答えるダニエルの表情が素敵なのです。みんなの愛する「いいもの」が、わたしやぼくの、幸せにつながっていくんですね。ダニエルは自然にそれを学びます。日々のシンプルな幸せに気づかせてくれる、そして、力強い未来への希望が伝わってくる絵本です。
この書籍を作った人
マサチューセッツ大学卒業後、幼稚園で15年間教える。油絵やコラージュを使ったユニークな技法で絵を描く。初めての自作絵本『詩ってなあに?』で、エズラ・ジャック・キーツ賞を受賞。“Wonder walkers”はコールデコット賞オナーブックに選ばれた。そのほか、絵を担当した作品に“Prairie Days” “Around The World In A Bathtub”“Lola's Fandango”などがある。夫とともに建てたマサチューセッツ州の自宅で、庭や森に囲まれながら暮らしている。
この書籍を作った人
1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。
この書籍を作った人
東京都生まれ。著作に『和の行事えほん(春と夏の巻)』『和の行事えほん(秋と冬の巻)』『着物のえほん』(以上あすなろ書房)、『やまからのてがみ』『はるのあしおと』『あおぞらとのはらのいえ』『ひとつぶのもりのたね』(以上「みのりのえほん」シリーズ 千世繭子・作 フレーベル館)など多数。現在、都内で絵画教室「小さな水彩塾」を主宰。
みどころ
全ページに型抜きのしかけがある、ドイツの絵本作家、ブリッタ・テッケントラップの作品。
詩のような文がしみじみと胸に沁みる、美しい色合いの絵本です。
「ぼくたちは みんな おなじ そらの したで
いきている
ここでも とおくでも」
夜の風景の中で、体を寄せ合うねこたち。
草原のライオン親子。
冷たい氷の上のペンギンたちも…。
みんなひとりぼっちではありません。
「ぼくたちは みんな だれかと であう」
互いに触れあい、山を駆けて遊ぶ。
自由に歌い、飛ぶ。
野原でも海でも、この世界に生きるものたちは、だれかといっしょです。
風景の色彩や、動物の愛らしい表情を味わいながら、絵本をめくってみてください。
同じ空の下で、わたしたちが生きる世界がひろがっていることを想像してみてください。
1ページごとにめくる楽しみと、広い世界を感じられる絵本。
おうちの本棚に加えて、親子で想像をめぐらせる時間を共に味わってほしい一冊です。
この書籍を作った人
ドイツハンブルグ生まれ。ロンドンのセントマーティンズ・カレッジ・オブ・アート、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学ぶ。子ども向け絵本および挿絵の分野で活躍しており、絵画展も多数開催されている。共にアーティストである夫、息子と一緒にベルリンで暮らしている。
出版社からの内容紹介
復刊リクエスト急上昇!!
多くの皆様からのリクエストに応え、『つきよにごようじん』がついに復刊決定!
谷山浩子さんが歌い、NHKみんなのうたでも放送された「まっくら森の歌」。
不思議な歌詞と、谷山さんの歌声に惹きつけられ、多くの人の心にいまでも残り続けている名曲です。
その世界観に近い絵本として、多くの方の記憶に残るのが、このたび復刊される『つきよにごようじん』です。
夜のパトロールに出かける森の番人。
雲間がくれの月あかり。
暗闇から何かがじっと見つめている。
昼間は愛らしかった動物たちが、夜には鋭い牙と爪を持ったモンスターに変身。
がさがさがさ……ひたひたひた……。
追うものと追われるもの……いつの間にやら追われるものが追うものに。
月夜にごようじん。
1987年6月に福武書店(現:ベネッセコーポレーション)より刊行され、その後は残念ながら長らく絶版になったままの状態が続いていました。
このたびの復刊化では、本作品の作画を担当し、この世界観の生みの親ともいえる絵本作家・本橋靖昭が所有する貴重な原画を丁寧にスキャンし、新たに版を起こします。
36年ぶりによみがえる、時代を超えて読み継がれる、とても不思議で印象的な世界。
ぜひ、ご家族でお楽しみにください。
みどころ
ねずみのヘンリエッタは建築家。設計から内装、家具デザインまで、お客様が望む以上の仕事をして、みんなを満足させています。そのヘンリエッタが、りす、もぐら、いもむし、かわうそなど、動物たちのために建てた15のすてきなお家を、のぞきに行ってみましょう!
「寝転べる場所がほしい」というねこのお家は日本家屋。お部屋の周りに縁側が張り巡らされていて、そこで釣りも楽しめます。ぜいたくなことに、日本庭園風の中には枯山水も作られていて、家主のねこはたこあげでリラックス。
動物たちのライフスタイルにあった工夫もたっぷり。「朝から晩まで太陽と一緒の家」とオーダーしたとかげのお家は、ガラス張りのサンルームが屋上に。なるほど、これなら寝転がって読書を楽しむにはうってつけです。
こんな風に、家具や部屋の配置、道具類など、細部も描かれた絵には、みどころがいっぱい。建物の断面図は、地中や洞穴などを土地を上手に利用して家が建てられていることや、繭や塔などの個性的な外観だけでなく、家の中の様子が一目瞭然。絵だからこそ見渡せる光景です。最後は、ヘンリエッタ自身のお家も登場。建築家のお家にはどんなこだわりがあるのか、絵本を読んで確かめてみてくださいね。
この書籍を作った人
詩人、小説家、児童書作家のジョージ・メンドーサは、世界中の子どもと大人向けに100冊以上の本を出版する。1968年、小説"The Hunter I Might Have Been"でルイス・キャロル・シェルフ賞を受賞。妻のルースと子どもたちのアシュリーとライアンと共に、人生のほとんどをニューヨーク市で過ごした。
この書籍を作った人
"The Two Rabbits" や "The Travels of J.B.Rabbit" など、いくつかの児童書を手がける。
この書籍を作った人
埼玉県生まれ。詩人、絵本作家。詩集に『ひつじがいっぴき』(フレーベル館)、『五つのエラーをさがせ!』(大日本図書)。創作絵本に『しきしきむら』シリーズ(岩波書店)、『おはようきょうりゅう』(教育画劇)、『ちょろちょろかぞく』シリーズ(理論社)、『はたらくんジャー』(フレーベル館)、『からだのなかでドゥンドゥンドゥン』(福音館書店)、『なになになあに?』(フレーベル館)。絵本の翻訳もてがけ、クリス・ホートン作『どうする ジョージ!』で第62回産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞。『クマのパディントン』(理論社)、翻訳絵本に『ヨゼフのだいじなコート』(フレーベル館)、『ともだちからともだちへ』(理論社)、『ピッツァぼうや』(セーラー出版)、『ぜったい食べないからね』他多数。
出版社からの内容紹介
「なにかお話を聞かせて!」馬車に乗り合わせた少女にせがまれ、男の人はとっておきの話をはじめました。まずしい靴屋の息子のハンスが、たった一人でコペンハーゲンに旅立つ話です。歌ったり、おしばいをしたいというハンスの夢は途中で挫折しましたが、苦労のすえ、お話を書くことで、ついに自分の王国を手に入れました。この少年こそ、人々の心に残る童話をたくさん書いたハンス・クリスチャン・アンデルセンだったのです。
『空とぶトランク』や『親指姫』『みにくいアヒルの子』『はだかの王様』『雪の女王』など、アンデルセン童話の名場面をたくみに織り込んだ伝記絵本。
「わたしの人生は、ひとつのすばらしいメルヘンでした」
*有名な児童文学や、その登場人物などもこっそり描き込まれています。ぜひさがしてみてください。
文:竹原雅子 編集:木村春子