なにでもないもん
- 作:
- 少年 アヤ
- 絵:
- 阿部 海太
- 出版社:
- 岩崎書店
「わたしが なにでもなかったころ わたしは どんなものにだって なれた」。けれど……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『なにでもないもん』。男の子でも女の子でもない、孤独な気持ちを抱える子どもたちに向けて書かれたこの絵本、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
「わたしが なにでもなかったころ」
どんなものにもなれたし、毎日好きなことを好きなだけやり、どこにだって行けた。
それなのに……。
「そのとき えらぶってことが
たのしいことじゃ なくなりました」
自らのセクシュアリティをめぐる生きづらさと向き合い、エッセイや様々なメディアでその思いを発信されてきた少年アヤさん。「なにでもない」自分に戸惑い、苦しくて孤独な気持ちを抱える子どもたちに向けて書かれたのがこの物語です。
男でも女でもない、ノンバイナリーを自認するに至った少年アヤさんの葛藤を、画家の阿部海太さんが力強くも美しい絵で表現。絶望や悲しみを感じると同時に、絵本の中には、あたたかく透き通るような、あらゆる色彩の光があふれています。
自分を肯定し、思いのままに生きていく。ある人にとって、これがどれほど難しいことなのか。知らず知らずのうちに、その誰かの道をふさいでしまっているのではないだろうか。
孤独を感じる全ての人に、そして子どもたちを見守る全ての人に、読んでもらいたい一冊です。
「ただの自分」で生きていく
「男の子」でも「女の子」でも、どちらでもない自分。それなのにどちらかの選択を迫られ、「ただの自分」でいることを否定されたとしたら、自分という存在を見失ってしまう子もいるでしょう。けれど、あとがきで少年アヤさんは言います。
「あなたはここにいるし、わたしもいます。
なにでもなくても生きています。
いいとか、わるいとかを、飛び越えた事実です。」
自分の中で燃える炎を思いながら、この言葉をしっかりとかみしめようと思うのです。
この書籍を作った人
1989年生まれ。私生活を綴ったブログが話題となりエッセイストとして活躍。著書に『尼のような子』(祥伝社)、『焦心日記』『ぼくは本当にいるのさ』(以上河出書房新社)、『なまものを生きる』『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』(以上双葉社)、『ぼくの宝ばこ』(講談社)など。初めての児童書に『うまのこと』(光村図書出版)がある。
この書籍を作った人
画家・絵本作家。1986年生まれ。絵本に『みち』(リトルモア)、『みずのこどもたち』(佼成出版社)、『めざめる』(あかね書房)、『ぼくがふえをふいたら』(岩波書店、第26回日本絵本賞)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。