───シリーズ1作目の『1番地ゴインキョとチーズどろぼう』を読んで、まずビックリしたのが、登場人物(ネズミ)紹介のページ。まだ登場していないチュウチュウ通りに住むネズミたちが全員紹介されているんですよね。ネズミたちを想像するのは難しくありませんでしたか?
ハツカネズミのすむネコイラン町にはチュウチュウ通りというすてきな通りがあります。その1番地にすむのは、 お宝チーズをいっぱいもってるお金もちネズミのゴインキョ。でも、ある夜・・・。 チュウチュウ通りの1番地に住むのは、お宝チーズをいっぱい持っているゴインキョ。ある日ゴインキョ宅に・・・。

おはなしは1番地から順番に発売されますが、シリーズとしてはチュウチュウ通り10匹のネズミの話でしたから、まず最初にキャラクターを想像するところからはじめました。先ほどの家の間取り図のようにゴインキョの家を想像したり、着ている服や体の特徴は…など思い浮かべて描くんですが、実は登場人物には私なりにモデルとなる人がいるんです。
───そうなんですか!
例えば「ゴインキョ」はお向かいの家のご隠居さんがモデル。お会いすると妙にホッとするんですが、「ゴインキョ」もチュウチュウ通りの仲間たちにとってそういう存在かなぁ…と思って(笑)。私の作品は結構、友達や知り合いをモデルにイメージをふくらませて登場人物を描くことが多いんですよ。
───たしろさんの創作のヒミツを垣間見れた感じで、すごく嬉しいです。チュウチュウ通りの登場人物の中に、たしろさん自身をモデルにしたキャラクターはいますか?
知り合いからは「レインボーじゃない?」といわれるんですが……一番近いのは「マージ」なんです。
4番地に住むのは、画家のレインボー。お金持ちではないし、有名でもないけれど、 絵を描くのが大好き。そんなレインボーの家に、ある日、老人ホームから手紙が・・・・・・。

───え?マージ!? いつも魔法に失敗して、チュウチュウ通りのみんなからもちょっと敬遠されている魔術師ですよね…。
大好評の絵童話シリーズ第8巻の主人公は、8番地に住む魔術師のマージ。 忙しいマージは、ある日「ふたごの呪文」をとなえ、もう一ぴきのマージを作りだそうとしますが・・・。
───意外でした…。では、自分に一番遠い、憧れるキャラクターは?
9番地のセーラかな。「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズに登場する女の子はみんなカッコイイんですが、セーラの冒険に出る身軽さ、ピンチに陥ったときの機転の利かせ方はすごいなーと感心します。
大好評の絵童話シリーズ第9巻 ハツカネズミのすむ ネコイラン町には チュウチュウ通りという すてきな通りがあります。 その9番地にすむのは、 船大工のセーラー。 お客さんのためにすばらしい船を たくさんつくってきたセーラが ついに自分のための 船をつくりました。 その名も「チュウチュウ号」。 さて、そのはじめての航海は……。
───先ほど、物語のさし絵のお仕事は「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズがはじめてだったと伺いましたが、ページのいたるところにかわいいさし絵が描かれていますよね。絵を入れる場所などはどうやって決められたんですか?
事前に編集者さんの方から、イラストのスペースが空いた状態の文章レイアウトを頂くんです。その位置に合わせて内容に合った絵の下絵を描いて、編集者さんと何度かやり取りをして、最終的にどういう絵を描くか決めていきます。
───特に大変だった巻はありますか?

『3番地 フィーフィーのすてきな夏休み』には、フィーフィーと14匹の子どもたちが登場します。フィーフィー自身のキャラを立たせつつ、子どもたちも1匹ずつ個性が出るようにたくさんの要素を描き込みつつ、他の巻との絵のバランスを取ることに苦労しました。
チュウチュウ通り3番地に住む、肝っ玉母さんフィーフィーが主人公。 14匹もの子どもを抱え、大忙しのフィーフィーを助けようと、チュウチュウ通りのなかまたちは・・・。
───たしろさんが描かれるネズミは、みんなとってもカワイイイメージがあるのですが、この作品には泥棒や海賊、悪徳プロデューサーなど、恐ろしい外見の悪者も出てきますよね。こわいキャラを描くのは大変ではなかったですか?
誰とはけっしていえませんが、こわいキャラクターにもモデルがいるので、大変ではなかったですね。描くときは「こわくなーれ、こわくなーれ…」と念じながら描いていました。

───本文中のさし絵に負けないくらい、表紙のデザインも各巻異なる色で囲まれていて、おはなしの内容にピッタリなイラストが散りばめられていてとってもステキ!このデザインもたしろさんのアイデアですか?
そうですね。「周りに何かモチーフとなるものを散りばめたら…」という提案を、編集者さんとデザイナーさんにしました。パステル調の色合いや散りばめるものについては、相談して決めていきました。
───そして、裏表紙にはおはなしの後日談的なエピソードが載っているんですよね。このエピソードの描き方が、絵本作家であるたしろさんならではだな…と思いました。
そうなんです。そこに気づいてもらえて、すごい嬉しい(笑)。裏表紙には、おはなしを読んで、私が一番描きたいと思った絵を描いたんですよ。
───せっかくの機会なので、たしろさんから見たそれぞれの作品のみどころ、オススメポイントを教えていただけますか?
●「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズ、たしろちさとさんのオススメはココ!
※こちらでは、たしろさんいちおしの裏表紙のイラストをご紹介しています!おはなしを読み終わった後にじっくり眺めてみると、さらに楽しめるヒミツが満載です。

『1番地 ゴインキョとチーズどろぼう』 今はやりの老人を狙った詐欺集団のはなしで、ゴインキョがだまされてしまう姿はすごくかわいそうで読むのが辛くなりますし「お年寄りをだますなんて!このー!」と怒りが湧いて来ました。でも最後はチュウチュウ通りの仲間たちの協力で大団円!私は、ゴインキョが若いネズミのバートにかける言葉と、ほっこりとあたたかい気持ちになれるラストが大好きです。

『2番地 クツカタッポと三つのねがいごと』
古道具屋のクツカタッポは命知らずの冒険家なのですがちょっとおかたづけがにがてで、靴は片一方しかはいていない…だからクツカタッポ。なんて素敵なネーミング!クツカタッポは私のお気に入りのネズミのひとり(一匹?)です。この作品で他に好きなキャラクターはビンの精霊「エダム」。なんでも3つ、願いをかなえてくれるんです!お話の中で、チュウチュウ通りのそれぞれのねずみたちの願い事もわかります。

『3番地 フィーフィーのすてきな夏休み』
フィーフィーと14匹の子どもたちのおはなし。子どもたちがお母さんをたすけようと一生懸命したことが大変なことになっちゃう…こういうことってあるある!このシリーズには美味しいものがいっぱい出てきますが、この巻にはとってもまずいものも出てきます(笑)。裏表紙は、絶対に描きたかった絵。旦那さんのチャーリーが、航海から帰ってきたシーンです。みんなお父さんにどんなおはなしをしているんでしょうね?

『4番地 レインボーとふしぎな絵』
画家であるレインボーのおはなしは、同じ職業としてすごく共感できました。私も以前、コンペや公募に作品を何度か出していたので、審査されるときのドキドキした感じを思い出しながら描きました。あと、使いたい絵の具がなくなってしまうところも「そうそうそう!」と思いながら描けましたね(笑)。

『5番地 チャイブとしあわせのおかし』
美味しいお菓子、ふとっちょの愛らしいケーキ屋さんのチャイブという見た目に反して、シリーズの中でも群を抜いてキューンと切ないお話でした。あることがあって自信をなくしてしまったチャイブは生き方を変えようと努力するんですが…。私もチャイブのケーキを食べてみたい。チャイブのケーキはみんなが幸せになるケーキです。

『6番地 クイックと魔法のスティック』
生まれながらのドラマー、クイックもチュウチュウ通りの
カッコいい女の子のひとりです(クイックのお父さんが
帽子をかぶっている理由に笑ってしまいました)。私も
学生時代に管弦楽部に入っていたので、楽器には思い入れがありました。クイックがショウで演奏するシーンは、頭の中で激しい曲が流れているイメージで描きました。
よく見ると、チュウチュウ通りの仲間たちが、ショウを見ているお客さんの中に登場しているので、探してもらえたら嬉しいです。

『7番地 レトロと謎のボロ車』
私も自分の愛車に「わかめちゃん」と名前をつけているので、ロージーの気持ちがすごく分かります(笑)。ボロ車・ヘンリーの謎を解く場面は特にハラハラドキドキしました。チュウチュウ通りの仲間たちが泥棒を捕まえる場面はどのネズミたちも一生懸命でとってもカッコいいです!おはなしが進むごとにヘンリーの表情が変わっていくのを気づいてくれた子はいるかしら…。

『8番地 マージともう一ぴきのマージ』
私の一番のお気に入りの魔術師・マージが主人公の作品。オススメです(笑)!呪文が成功して「完璧な」もうひとりの自分を生み出せたマージ。でもその「完璧な」もうひとりのせいでたいへんな気持ちに…。あーあ、自分で墓穴を掘っているマージが憎めません。完璧じゃない部分も含めてその人なんですよね。最後の、懲りていないマージも好き。

『9番地 セーラと宝の地図』
セーラは本当に勇敢な女の子で、海賊に襲われて海に捨てられそうになったときの機転にはほれぼれしました。私もセーラみたいに船に乗って冒険の旅にでかけたくなっちゃいました。

「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズはどの巻から読んでも面白くて楽しいですが、このスタンプの話だけはぜひ、最後に読んでほしいです。お手紙がほしいスタンプの悩みに対する、チュウチュウ通りの仲間たちの行動やセーラの言葉が本当にあたたかくって…。こんな仲間がいたらいいなあと心から思ったラストでした。
───ありがとうございます。どのおはなしにもそれぞれ魅力がありますが、子どもよりも大人が読んで胸を突かれる話が多いのも「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズの魅力だと感じました。

5番地のチャイブの話とか、切ないですよね…。このシリーズは、自分の日常やまわりの人間関係でもありそうなことがドキドキのエピソードにのせて語られていて、読んでいただくと、どこかに共感できるネズミがみつかるのではないかと思います。どの巻に登場するネズミにもそれぞれ抱えている悩みがあって、それを解決するためにチュウチュウ通りの仲間たちの協力や助言があります。それがどれも名言で…。エミリー・ロッダさんのストーリーの素晴らしさとさくまゆみこさんの翻訳の妙だな…と感動してしまいます。
───たしかに、「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズには、名言がたくさん出てきますよね! 各巻の名言を絵本ナビセレクトでまとめてみたいです。
それはすごく面白そう!
───というわけで…。「チュウチュウ通り」名言集をまとめてみました!