●『バングラデシュ』を撮影した写真家・冒険家の石川直樹さんと本シリーズ編集長島本脩二さん トークショーレポート(@東京・代官山 蔦屋書店)
代官山 蔦屋書店で旅行コンシェルジュをつとめる森本剛史さんの司会で、「世界のともだち」シリーズ編集長・島本脩二さんと、写真家・石川直樹さん(『バングラデシュ わんぱくアシフと青い自転車』著者)のトークショーが行われました。
(*石川さんはこの日、フィリピンから帰国中。飛行機が遅れているとのことで、先に森本さんと島本さんのお話がスタートしました)

森本さん
編集長、島本さん
森本:僕は100か国をバックパッカーで旅して歩きまして、トラベルライターをやっていたことがあるんですが、今はこうして蔦屋書店の旅行コンシェルジュとして旅に行かれるお客さんの相談にのったり、「こういう本がいいですよ」とおすすめしたりしています。
今回発売された「世界のともだち」シリーズですが、旧版のシリーズ「世界の子どもたち」が30年前に出版されたときのこともよく覚えています。いいシリーズでしたよね。
島本:そうですね。この「世界のともだち」には旧版シリーズがありました。あのときは偕成社の50周年記念事業として、手伝ってくれないかと偕成社から声をかけられました。発端は当時偕成社で仕事をしていた写真家の橋口譲二さんが「こんな本をつくったらおもしろいんじゃないか」と言い出したんだと思いますが、企画をふくらませるところから関わりました。
観光では、個人の暮らしまでは入れないですよね。「衣」「食」「住」、そして「交通」・・・いわゆる移動する(体を動かす・ものを運ぶ)という4つが、人間の営みの基本になる。この4つのテーマを写真で表現しよう、そこを通して36か国の子どもの暮らしを見せようと。僕は写真のセレクションや配列をやりましたが、日本を含む36か国の子どもたちを撮り下ろした、当時好評いただいたシリーズでした。

写真をスクリーンにうつしながらトークははじまりました。
代官山 蔦屋書店の店内ディスプレイ。
森本:食事風景や部屋の様子、学校、地域、かばんの中身を見せるというのは、旧シリーズも新シリーズも共通していますよね。新シリーズ制作にあたって、具体的にはどのへんを意識されたんですか。
島本:21世紀の子どもたちにはじめて外国の生活を伝えるために、どうするのかをすごく考えました。旧シリーズはまじめな感じでしたが、今回は「世界のともだち」がテーマですから、とにかくともだちに会いに行くように楽しく伝えたい。そのためには、デザインが大事だと。
偕成社の編集部から「デザインは寄藤文平さんがいい」という強い希望があり、お願いすることになりました。半年くらいダミーのやりとりをしまして、結果としては大成功だったんじゃないかと思います。
旧シリーズと決定的にちがうのはイラストを入れているところ。町や、家の中がどうなっているのか、写真より絵で伝えたほうが、ずっとわかりやすい。
あとはアジアを多く入れようとか、近々ワールドカップがあるブラジルは外せないとか、国選びも時代に即した点を意識しましたが、中国の撮影がむずかしかったです。中国はなかなか協力してくれる親子が見つからなくて。ようやく、お父さんが芸術家の親子が協力してくれることになりました(中国は第2期で登場します)。

中国の親子。お父さんは芸術家。
森本:今回、日本は入っていないんですね。
島本:入っていないです。36か国の外国です。
30年前とはいろんな状況がかわりました。たとえばモンゴルのゲルという伝統的な移動式住居の中でふつうにインタ―ネットができる時代です。各家庭にどんなふうにコンピューターが入り込んでいるのか、写真家に見てきてほしいとお願いしました。
●ここで、石川さん到着!

石川:実はきょうフィリピンから帰ってきたのは、フィリピンの子どもを撮影していたからなんですが、この企画、皆さんが思っている以上に乱暴な企画で、子どもの選択はけっこう写真家まかせなんですよ(笑)。フィリピンの子はどうやって見つけたかというと、前に泊まった宿のおばちゃんに相談したら、うちの目の前の家に何歳くらいの年頃の男の子がいるよ、と言われて、向かいの家に「コンコン」とドアをノックしに行ったわけなんです(笑)。
2、3日子どもをカメラで追いかけてもいいですか、と。そしたら「あー・・・、いいよ」と(笑)。
森本:フィリピンの、どこに行かれたんですか?
石川:ルソン島北部に、空までつづく階段みたいな棚田が広がる場所があります。世界遺産になっているんですが、以前その風景を撮影したくて訪れたことがありました。フィリピンは海文化なのに、その場所は山岳文化。台湾から南へ下ってきた人たち、台湾の先住民族がルーツじゃないかと言われていて、フィリピン南部の人とは感じが違うんです。今回、そこをもう一度訪れました。
島本さん:現在『バングラデシュ』がすでに刊行されていますが、最初にこの企画を依頼されたときは、どんなふうに思いました?
石川さん:おもしろい企画だなと。写真絵本って、絵の絵本にくらべると刊行点数が少ないですよね。ロングセラーはあるんですが、開拓しがいのある分野だなと。もっと写真で絵本をいろいろ試してみたいなと思っていた矢先、声をかけてもらったので、よろこんで参加させてもらいました。
バングラデシュは1971年建国で、インドから分離独立したまだ若い国なんですよね。17歳のときに行ったインドを思い出します。20年前のインドみたい。ワイルドで、人がよくて、何度か通ううちにはまってしまって。今回撮らせてもらうことになりました。
島本:バングラデシュは、どこに行っても人に見られている、と本に書いてありますね。
石川さん:本当にそうなんですよ。ここならゆっくり一人で写真が撮れるだろう、と高いビルの屋上にのぼって一息つくと、となりのビルから人が見ている(笑)。ビルから下をのぞいた風景でも撮るか、とカメラを向けると、下からビルの上を見上げている人がいる。いつもぜったい誰かに見られている。

人がいっぱいのダッカ。
森本:そんなたくさんの人の中で、アシフくんに出会ったのは、どんないきさつがあったんですか。
石川:当初は、以前バングラデシュを旅したとき仲良くなった、タクシーの運転手を探そうと思ったんです。ガンジス河の河口を訪れたとき、「帰りに、オレのうちによっていけ」と言われて寄っていった、あの家族を撮りたいと思いまして。彼に住所は聞いていたので、だいたいこのへんだろうと思われるあたりまで行くんですけど、その先がなかなかたどり着けなくて。ぐるぐる歩き回っているときにアシフと出会って、撮影させてもらうことになりました。
島本:他の写真家さんはデジタルカメラだけど、石川さんはほとんどフィルムで撮っているんですよね。現像して、紙に焼いて、のばして、自分で色を調整されるのだと思いますが・・・あえてフィルムで撮るのはどうしてですか。

石川:レンジファインダーカメラを使っていると、被写体によれないんですよね。デジタルカメラだと、ぐっと被写体によれるんです。それはいいことなんですが、僕にとってはデジタルカメラは自由すぎると感じることがあって。ついもう6、7枚撮っておこう、と、シャッターを押す回数も多くなりがちになる。フィルムは1本20枚しか撮れませんから、それだけ制限があります(マキナの67を使っています)。
シャッターを押す重みというか、「撮るよ」というとき、被写体の構える感じもちがってくる。被写体がカメラとむきあってくれるんですね。いろんな要素がからみあって一枚の写真ができあがります。僕にとっては制限があったほうが、制限を超えて行ったところに何が生まれるかなという意識になります。それがおもしろいなと思っています。

石川さんがフィルムで撮ったアシフの家族とご近所の一枚。
島本:今後も刊行がつづきますが、「世界のともだち」シリーズ、どんなところがポイントだと思われますか。
石川:フィリピンに『バングラデシュ』や他の国の本をもっていったら、フィリピンの兄弟が本を食い入るようにのぞきこんで、2人で指差してしゃべりあっているんですよ。やっぱり写真絵本の力ってすごい。日本語なんてわからない6〜7歳の子にも、何かを伝える力があるんだなと思いました。
まだ1期が完成したばかりですが、これから浅田政志くん(写真展「浅田家」でコミカルな家族の肖像をとらえ、第34回木村伊兵衛賞受賞)やERIC(エリック)など、僕自身の友人たち、注目の写真家が続々登場するので楽しみです。フィリピンの写真絵本も、楽しみにしていてください!
●石川さんに質問しました

石川さんが選ぶアシフの「アシフらしい!」写真は?
答えは・・・本の一番最後、あとがきに掲載されている小さな写真。「子ども用の自転車をもっている子はあまりいないんですよ。アシフは、こんな乗り方もできるんだぞ〜って僕に見せてるんです。足をハンドルにのせて、自慢げですよね(笑)」
●『フランス』を撮影した、MIKA POSAさんもトークショー会場にいらっしゃいました!

プリュンヌが4歳のとき、ショーに出ていた彼女の目力にひとめぼれ。以来、おつきあいがつづいているそう。10歳になったプリュンヌの意志の強さ、明るさ、前を向く力を、MIKA POSAさんは尊敬しているそうです!
●『世界のともだち 第1期全12巻セット』には、オリジナルポスターが5枚付いてきます!!

←「世界のともだち」シリーズ全12冊が化粧箱入りに入ったセット、
『世界のともだち 第1期全12巻セット』がこちら。
セットで買うと、豪華な特典がついてくるそうなのです。
それが・・・

こちら!!「世界のともだち通信ポスター」です。
「みんなの顔、大集合」「世界のあいさつ」「世界のごはん」「世界のおうち」「世界のともだちマップ」の、驚きの5枚セット。
図書館や教室にもぴったりなんです。
さらに・・・絵本ナビ限定!!「世界のともだち」シリーズ全12冊のうち、3冊購入された方には、5種類のポスターの中から1枚、おまけとしてプレゼントさせていただきます!

※どの絵柄が届くのかはお楽しみです。
※数量限定30枚です。完売次第、終了とさせていただきます。
この機会をどうぞお見逃しなく。
●「世界のともだちブログ」も公開中です!

ただいま偕成社のホームページでは「世界のともだち」シリーズの、ブログも公開中です!
本には掲載されていない写真やエピソードを紹介するカメラマンさんの
「取材日記」のほか、編集部からの制作エピソードやシリーズの
様々な切り口での楽しみ方なども紹介されています。ぜひ遊びに行ってみてください!