『時の迷路』『文明の迷路』『進化の迷路』『昆虫の迷路』などベストセラーとなった迷路絵本シリーズの作者、香川元太郎さんのアトリエにおじゃましました! 秋にシリーズ11冊目となる『動物の迷路』が発売されます。取材にうかがったときはちょうど本描きの真っ最中。制作中の絵を見せていただきながら、シリーズならではのご苦労や、絵本を描くきっかけになった息子さんとのエピソード、子ども時代のお話などをうかがいました(2014年7月17日に取材は行われました)。
●『時の迷路』からはじまった大ベストセラー
───『時の迷路』が2005年に発売されたとき一目見て「すごい!」と思ったことを覚えています。細密な絵とストーリーに驚きました。ちょうどうちの息子が2、3歳で、一緒に読んでいたんです!
そうでしたか。ありがとうございます。
───「歴史考証イラストレーター」でいらっしゃる香川さんが一枚一枚事実確認をもとに描いた絵のなかに、かくし絵・迷路・クイズがたっぷり! 子どもが夢中になるのはもちろん、一緒に読んでいる大人も真剣になっちゃって「かくし絵があと1個見つからない」「あぁっ、もうこんな時間!」(笑)。1冊で、なんて長時間遊べるんだろうと。しかも、歴史や自然について学ぶことができます。「迷路絵本」シリーズは、今や240万部を超えるベストセラーとなりましたね。
ありがたいことです。4冊目の『進化の迷路』くらいから本格的に部数がのびて、メディアの取材も増えてきたかもしれませんね。でも1冊目『時の迷路』も出版して1か月くらいで増刷になったので、これはいけるなと内心手ごたえを感じていました。
───さきほど取材スタッフが、壁掛けのお城のカレンダーに目をうばわれていましたが、そもそも『分解図鑑 日本の建造物』(東京堂出版)、『日本の城』(世界文化社)など、歴史復元イラストの描き手として著名だった香川さん。なぜ迷路絵本を描こうと思われたのですか。何かきっかけがあったのですか。
きっかけは息子です。小さいときの息子が迷路好きで、買ってきた本の迷路をよくやっていました。あるとき、思いつきで僕がイラスト入りの迷路を描いてやったら、すごく喜んだんです。あまりに喜ぶので、気をよくしてもうちょっと力を入れて描いてみました。そしたらもう、ものすごい喜びようで・・・。
───うわー! お父さんがこんな迷路を描いてくれるなんて、あこがれちゃいます。 船着き場がいくつもありますけど、どこから上陸すれば剣にたどりつけるかわからないのですね。まずは船着き場を選ぶところからですね?
そういうことですね(笑)。当時息子は5歳くらいでしたが、この絵の気に入りようといったら・・・毎日のように、絵を広げて遊び、夜は大事に4つに折りたたんで自分の宝箱にしまう。で、また出してきて迷路をたどって、また宝箱にしまうんです。そんな様子を見ていて、これは絵本になるんじゃないかと。「迷路絵本」という発想はそのときに生まれました。 ただ、歴史物のイラストの仕事が忙しくてすぐには取りかかれないまま、時間が過ぎていきました。10年くらいして、ちょうど歴史物の仕事が少し途切れそうなタイミングがあったので、そのまま出版できるくらい描きこんだ見本を制作し、おつきあいがあった出版社に持ち込みました。
───10年の間に、5歳だった息子さんが15歳に(笑)。でもずっと迷路絵本への気持ちを持ちつづけていらしたんですね。出版社さんの反応はいかがでしたか。
よかったです。編集の方に、せっかくだから歴史物の知識をいかしたほうがいいのではないかと助言をもらって、それからまた内容を練り直して出来あがったのが1冊目『時の迷路』でした。
───迷路をたくさん描くことになりますが、迷路を描く難しさはなかったのですか?
うーん、迷路を描くこと自体は、自分にとってはそんなに難しいことでもないんですよね。それよりも、物語の設定や、12枚の見開き絵のなかにどんな題材をどのように配置し、かくし絵をどこに入れるかに頭を悩ませることが多いです。迷路の道筋全体を決めるのは最後なんですよ。
>>次のページでは新作についてお聞きします!