ボローニャ国際絵本原画展入選後、海外でデビュー。世界各国でかわいいボードブックタイプのしかけ絵本を次々刊行されている絵本作家、よねづゆうすけさん。
そんなよねづさんが初めて日本独自に描いた絵本『あいうえお』が注目を集めています!
子どもの手におさまるミニサイズの見開きに、絵と50音のひらがな文字と筆順が表示。
ボードブックでありながらページの厚みが薄いので、なんとたっぷり102ページ。
取材チーム一同、いままでのよねづさんの絵本では見たことがない、素敵なクレヨン画にうっとり……。
実際の絵の描き方や、春先にあわせて出版を急いだ理由など、様々な質問にていねいに答えてくださいました。
原画、ラフ画、画材も見せていただきました!ファン必見です。
───よねづゆうすけさんのしかけ絵本シリーズは、絵本ナビでも大人気です。 先日、「だーれ?」シリーズを、あるおはなし会でスタッフが個人的に読んだのですが、3歳の子どもから大人まで大盛り上がりだったんです! しかけをめくる前に、みんなで当てっこするんですが、全然当たらないんですよ。 『おはな だーれ?』の白いすずらんに生き物がかくれている場面では、小2くらいの子が「くらげじゃないかと思うんだけど……」ともじもじしながら言う、その姿のかわいいこと(笑)。しかけをめくったら、しろくま!「そっちかぁ〜〜!」とみんな大声をあげて笑っていました。
よねづさんおなじみのしかけ絵本は、くっきり描かれた輪郭線、はっきりした色使いが特徴。人気の『まる まる まんまる』『かく かく しかく』のシリーズ続編『さん さん さんかく』も出版間近。最終ページで制作ラフをご紹介しています!
「だーれ?」シリーズは、生き物の体のどの部分がかくれているか、しかけをめくるまでわからないんですよね。でもそんな話を聞くとうれしいです。子どもの感性ってすごいですね。くらげですか……。今度、アイディアを考えようかな(笑)。

───出版されたばかりの絵本『あいうえお』を見たとき、ちょっと驚きでした。
しかけ絵本じゃない! いつもより一回り小さいサイズで、分厚いボードブックの形もおもしろいなと思いましたが、何と言っても絵がちがう! よねづさんの絵本ではあまり見たことがないクレヨン画のタッチがすごく素敵だと思いました。
「あ」のページは、あひる。左ページには筆順も掲載。
たしかに絵本でクレヨン画を全面に描くのははじめてですね。テキスタイルや文具といった雑貨類では、クレヨン画のイラストレーションを描いていたので、僕としては新しいものではないのですが、びっくりされる方もいらっしゃるかもしれませんね。
───友人が“米津祐介さん”のステーショナリーのファンで、毎年手帳を購入しています。しかけ絵本の“よねづゆうすけさん”と同じ人物だと知ったときは驚いていました。
しかけ絵本はポップでカラフルな絵ですが、このクレヨンのにじんだような深い色あいは、また格別の美しさがありますね。クレヨン画をたっぷり使った絵本『あいうえお』を制作することになった、きっかけは何ですか?

スタイリッシュなステーショナリーたち。お店などで目にしている方も多いのでは?
以前から個展に来てくださっていた編集者さんから、クレヨン画のシンプルな絵をいかした、「あいうえお」をテーマにした絵本ができないかとご提案いただいたことがきっかけです。僕自身も前から作りたいと思っていたので、よろこんでOKしました。
───いつ頃から企画のお話があったのですか?
本ができあがる1年ちょっと前ですかね。僕はいま長野県に住んでいるのですが、編集者さんが長野まで来てくださったり、東京に出てきたときにお会いしたり、メールや電話などでもやりとりしながらすすめました。
具体的な作業としては、まずモチーフになりそうなものをリストアップし、そのなかで描きやすそうなものにマーカーで印をつけて、全体のバランスも考慮しながら、モチーフを選んでいきました。
そして小さなラフを作りました。ページに割り振って並べたときの、前後の絵の印象なども確認するために、この小さなラフは何度か作りました。

モチーフをリストアップ。
かわいい小さなダミー絵本たち。

ひとつひとつの愛らしさにもう夢中です!
───うわーっ、かわいい!! これ、欲しい!
ガチャガチャに入っていそうなサイズですよね(笑)。
性格が几帳面なので困ります(笑)。こういうのを作っている作業そのものが楽しいんですよ。
くじらやきつねなど、いままで描いたことのあるモチーフもあるので、とりあえず最初はそのデータを入れています。
───では、以前描いたイラストレーションも、『あいうえお』には入っているのですか?
いいえ。最終的にはぜんぶ描きおろしていますので、同じモチーフを同じように描いたものもありますが、一点、一点、新しい絵です。
───それは贅沢ですね。今回は「おに」「のりまき」など、日本ならではのモチーフも入っていて楽しいです!
以前お話をうかがったときは、海外の出版社さんに、外国ではあまりメロンを食べないからと言われて、メロンのラフ画が却下になったとか……。(前回インタビュー記事はこちら>>!海外出版にいたるきっかけなどがくわしく語られています。)
『あいうえお』では、日本ならではのモチーフを楽しんで選ばれたのではないでしょうか?
あえて日本っぽいモチーフをと意識したわけではないのですが、編集者さんとのやりとりのなかで『あいうえお』のなかに入る言葉として「大和(やまと)ことば」を意識しました。なので、自然に日本のもののアイディアが出てきたのかもしれません。
実はカタカナバージョンも作れたらいいなと思っているので、カタカナが元になる言葉はなるべく『あいうえお』に入らないようにしています。たとえば「れ」では「れもん」も候補にあがりましたが、やめて、「れんこん」になりました。
カタカナのラフも見せていただきました!
───穴のあいた「れんこん」もかわいいですよね(笑)。他に、これはモチーフ選びが難しかったという文字はありますか?
「る」のモチーフ選びが難しかったです。鳥の「るり」もあったのですが、幼い子が見てすぐわかるものにしたかったので、結局「かえる」にしました。
「せ」は最初「せんぷうき」だったのですが「せんべい」に変えました。なるべく機械類よりは、動物や食べ物など、時代の変化の影響を受けないもの、加工される前のシンプルなものをという方向で選んでいます。
長く愛される絵本になったらいいなという願いをこめて。