絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  アメリカで15もの賞を受賞した絵本『One』『Zero』乙武洋匡さんインタビュー

本好きの長男、マイペースな二男、生まれたばかりの長女のパパとして…。

───乙武さんは3人のお子さんのパパですが、今回の絵本を訳しているとき、お子さんに読み聞かせたりはしましたか?

しませんでした。家にはあまり仕事を持ち込まないようにしているんです。



───3人もお子さんがいると、子育ても大変ですよね。

長男は空気を読む性格なので、家で仕事をしていても書斎には入って来ないのですが、次男はマイペースで腕白で…。書斎のドアを閉めて、「今は忙しいです!」という空気を出していても、ドアを開けて入ってきて「何やってるの?…仕事?…つまんなそうだね」と上から目線で言ってくるんです(苦笑)。

───兄弟でも性格が全然違うんですね。お子さんと絵本を読んだりしていますか?

長男は本好きだったので、小さいころは絵本をたくさん読んであげました。うちは絵本を選ぶとき、親の趣味に偏るのは良くないと思っていたので、毎月1冊絵本が届くサービスに入りました。そこから届く日本の落語絵本から、外国のシュールな作品まで、幅広く何でも子どもに読んであげるようにしています。その甲斐あってか、長男は本が大好きな子に育って、暇さえあれば本を読んでいます。

───上のお子さんの、今、ハマっている本はなんですか?

最近は『オズの魔法使い』にハマっています。私は知らなかったんですけど、15巻シリーズが出ているんですよね…。

───絵本ナビでも以前、「完訳版 オズの魔法使い」シリーズ(復刊ドットコム)を紹介したことがあります…15巻セット、お持ちなんですか?

妻と長男が本屋さんに行ったときに、その15巻セットを見つけたらしいんです。彼は欲しがったんですけど、とりあえず1冊だけ…とそのときはお茶を濁したそうなんですね。でも、ちょうどその後、春休みに長男が友達とキッザニアに行って、友達がみんなゲームを持っていて、自分だけ持っていなかったことがあったらしく、初めて「ゲームが欲しい」といい出したんです。

───子どもがゲームを欲しがる鉄板シチュエーションですね…。

私も来たな…と思って(笑)。ある朝、長男とふたりのときに「ゲーム欲しいんだって?」って切り出したんです。

───はい…それから…?

「お父さんはゲームをさんざんやってきた。で、本もたくさん読んできた。そのお父さんの経験からすると、ゲームは、そのときはすごく楽しかったけれど、あとになって自分の中に残っているものってあんまりないように感じてる。でも、本は読んでいるときも楽しかったし、大人になって振り返っても良かったなって思う。いろんなことを本は教えてくれて、その教えてくれたことがお父さんの中に今も残っている気がするんだ。だから、お父さんの経験からすると、お父さんはこれからもゲームを買ってあげたいという気持ちに、たぶんならないと思う。でも、本はいくらでも買ってあげたいと思う。
ゲームを買ってもらえなくてイヤかもしれないけど、そのかわり、お父さんは、『オズの魔法使い』15巻、全部買う!」…っていったら、「そっか」ってわりとすんなり納得してくれました。

───うわ〜〜! 本がゲームに勝った瞬間ですね。すごくいいはなしです!!

その夜、アマゾンでポチっとしました…(笑)。15巻、結構ボリュームがあるものなんですが、彼は2ヵ月ちょっとで全部読み終わって、今は彼なりのハイライトシーンを選んで読むようになっています。とにかく長男は、ずっと本を読んでいますね。

───乙武さんが子どもの頃に読んで好きだった絵本は、どんなものがありますか?

からすのパンやさん』(作:かこ さとし  出版社:偕成社)や『くまの子ウーフ』(作:神沢 利子  絵:井上 洋介  出版社:ポプラ社)は大人になっても覚えているくらい大好きでした。あと、安野光雅さんの「旅の絵本」シリーズが好きだったので、今でも似たテイストの絵本を見ると、子どもたちへのプレゼントに買ってしまいます。

───お子さんとの関わり方を伺うと、すごく素敵なお父さんだな〜と感じました。改めて、絵本ナビユーザーへ『One ワン』と『Zero ゼロ』をどういう風に楽しんでほしいか、メッセージを頂けたらと思います。

それぞれに伝えたいメッセージを込めてはいるんですが、本って説教臭いものであってはいけないと思っているので、作品の持つメッセージ性に関係なく、色や数字というシンプルな素材がキャラクターになった、すごく親しみやすい物語だという部分を楽しみながら読んでもらえたら嬉しいです。そして、読み終わった後に自然とメッセージが届いていたら、さらに嬉しいですね。

───ありがとうございました。

編集後記


新潟の講演会と、テレビ番組の生放送の間という、短い時間の中インタビューに答えてくださった乙武さん。翻訳作業のはなしや、いじめのはなしには真剣な表情。でも、息子さんのはなしになると、途端に笑顔に! その優しい眼ざしからにぎやかな乙武家の様子がうかがえるようでした。インタビュー後には絵本ナビスタッフ持参の本にサインをしてくれるサービスも! もちろん、絵本ナビユーザーの皆さまへのサイン本も、しっかりご用意していますので、ご期待ください!




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インタビュー・文: 木村春子(絵本ナビライター)
撮影:所靖子

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乙武 洋匡(おとたけひろただ)

  • 作家。1976年、東京都生まれ。
    早稲田大学在学中に上梓した『五体不満足』は600万部のベストセラーに。卒業後はスポーツライター、小学校教諭などをへて、現在は、政策研究大学院大学で学ぶかたわら、東京都教育委員を務める。教員時代の経験をもとに描いた小説『だいじょう3組』は映画化され、自身も出演した。子ども向けの作品には、『オトタケ先生の3つの授業』などの児童書や、『かっくん どうして ボクだけ しかくいの?』などの翻訳絵本がある。

作品紹介

One ワン
作・絵:キャサリン・オートシ
訳:乙武 洋匡
出版社:講談社
Zero ゼロ
作・絵:キャサリン・オートシ
訳:乙武 洋匡
出版社:講談社
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