《スペシャルコンテンツ》インタビュー

●どんなタッチの絵になるかで、試行錯誤?

サトシン：二人と何度もやり取りをして、ようやくストーリーはまとまってきたんですが、次に悩んだのが絵を誰に描いてもらうかということでした。

───たしかに、ガチャピン・ムックはビジュアルがとても個性的ですから、絵本するとき、どんな絵になるかで、作品の印象も大きく変わってきますよね。

サトシン：最初は写真にすることも考えたのですが、それだと、オレの絵本の世界感が薄れてきてしまう……。それで白羽の矢を立てたのが、ドーリーなんです。

───ドーリーさんは、今までも『どうぶつまぜこぜあそび』(出版社：そうえん社)や、『ま、いっか！』(出版社：えほんの杜)など多くの作品で、サトシンさんとタッグを組んでいる絵本作家さんですね。

サトシン：彼女と初めて会ったのが2013年くらい。その頃はまだ絵本作家ではなく、イラストをちょこちょこ描いている程度でした。その後、何回かオレが大阪でイベントをやるときに手伝いに来てくれて、イベント会場で子どもたちに、自分が描いた絵をプレゼントしていたんです。そんな様子を見て「絵本に興味があるんじゃないの？」と持ちかけてみたんです。それで、一緒に出版社にプレゼンしてみたら、ドドドドドと立て続けに5冊ぐらい出版が決まって……。オレの作りたい世界を理解して、絵に描き上げることのできる人なんです。そんなわけで、今回の絵本もお願いしたいと思いました。

───ドーリーさんはサトシンさんから『みどくんとあかくん』のおはなしを聞いたときに、どう思いましたか？

ドーリー：あのガチャピンとムックの絵本に関わらせてもらえるなんて、最初、聞いたときは信じられませんでした。もともとガチャピンとムックのことは大好きでした。でも、本当に絵を描くんだと決まってからは、大好きだからこそガチャピンとムックをどんなビジュアルで描いたらいいか、とても悩みました。

サトシン：ドーリーの絵のいいところは、彼女の描くキャラクターが天真爛漫、純粋無垢ばかりではなく、どこかブラックな部分、性悪テイストな毒が入っていること。その毒の入り加減も含めて今回の『みどくんとあかくん』を描くのに、ピッタンコだなと思ったんです。

ドーリー：サトシンさんに、私の得意とするタッチで描いていいと言っていただいたことで、無理にタッチを変えなくても良いんだと思えて、安心しました。

───でも、絵本の原画を描く前には、何パターンか候補を作って見せたんですよね。

ドーリー：はい。絵本の絵を描く前にはいつも、サトシンさんの表現したい作品の世界や、キャラクターの性格などを理解して、何パターンか候補を出します。その中から、決まったものを基本に32ページの絵を完成させていきます。

『みどくんとあかくん』の絵本のための習作を特別に見せてもらいました！

───今回、特に難しかった構図やキャラクターのポーズなどはありましたか？

ドーリー：全部です、てへ(笑)。今までの絵本では登場人物のビジュアルをゼロから作るのが難しかったですが、今回はすでにキャラクターのビジュアルがあって、それが私が子どもの頃から知っているような人気者で……。どうやって絵本の中で動かしていいのか、慣れるまではとても苦労しました。

サトシン：最初に描いてもらった下絵では、ふたりともやたらとオーバーアクションだったんです。それはそれで楽しいんだけど、もっとアクションを抑えた方が、彼らの面白さや突拍子のなさが際立つんじゃないかと思い、アクションを過剰にしすぎないようにと注文を出しました。

ドーリー：サトシンさんに言われて、主人公の二人の動きよりも周りの人たちがオーバーアクションになるように、構図を変えました。でも、ガチャピンは普段ほとんど表情が変わらないけれど、人一倍アクティブで…そのギャップを描き分けるのが特に難しかったですね。

───今回、本描きに入る前の下絵のタッチも持ってきていただきましたが、ガチャピンとムックは絵を見てどう思いましたか？

ムック：かわいく描いてくれて、ありがとうございます。

ガチャピン：いろいろなぼくたちがいて、プロの絵本作家さんってすごいなと思いました。

───本当にそうですよね！　

サトシン：今回、絵本の中で二人は周りを怒らせちゃうことや「えーー?!　そんなことまでしちゃうの？」とビックリすることもやらかしています。でも、それが無茶な表現になりすぎないのはやはり、ドーリーが、二人のキャラクターを理解し、サトシンワールドの登場人物として描き切ってくれたからなんですよね。それと、ガチャピンとムックがノリノリで絵本の世界に入ってきてくれたからだと思います。

ガチャピン：絵本の中に入るって、どんな感じなんだろうと思ったけど、普段のぼくとムックのやり取りそのままだったから、嬉しかったなぁ。

ムック：おいしいものを食べたり、普段乗れない車に乗ったりできたのも、絵本の世界ならではだとおもいました。

───いろいろ失敗しても「ごめんなさい」と謝る素直さや、でもすぐ次に新しいことを見つけちゃう好奇心旺盛なところ……。ガチャピンとムックも普通の子どもたちと変わらないんだって思いました。

ガチャピン：だって、ぼくたち5才だもん。

ムック：そうですぞ！　でも、いろんな人に迷惑をかけてしまうのは、本当に「ごめんなさい」と思っていますよ。

サトシン：ガチャピンも言うように、子どもって自分のやりたいことや好奇心が一番大事で、相手の迷惑とか善悪の判断って二の次になっちゃうことが多いと思うんです。しかも、それが友だちと一緒ならもっともっとエスカレートしちゃうこともある。そんな子どもならではの「あるある」も伝えたいと思いました。

───絵本を読んだ子どもたちは、「ガチャピン・ムックもぼくたちと同じなんだ〜」と親近感を感じて、もっともっと二人のことを大好きになりますね。

サトシン：親近感を感じてくれて、同時に「ガチャピン・ムックみたいに、一緒にヤンチャをしてくれる友達がいるといいな……」と思ってくれたら、もっと嬉しいですぞ〜〜。