真っ白な塩むすびを、お米を炊くところから一工程ずつ丁寧な写真で紹介した『おにぎりをつくる』(ブロンズ新社)。料理家・高山なおみさんの「子どもたちが、自分ひとりでもできるようにと思って、この絵本をつくりました」という、思いのこもった写真絵本です。
この度、姉妹編となる『みそしるをつくる』が発売されました。発売を記念して、写真を担当した長野陽一さん、デザインを担当した寄藤文平さんと久しぶりに顔を合わせた高山なおみさん。3人に撮影中の様子などいろいろお話を伺いました。
●煮干しオーディションに段取り表……撮影は工夫がいっぱい?
───『みそしるをつくる』の発売、おめでとうございます。『おにぎりをつくる』と同様、読んだらこの絵本の通りにみそ汁を作ってみたくなりました。今回、高山さん、長野さん、寄藤さんが集まるのは久しぶりですか?
高山:そうですね。『みそしるをつくる』の撮影は2020年7月に行ったので、そのとき以来です。
───撮影中の写真を見せていただいたのですが、撮影はどこで行ったのですか?
高山:撮影は私の住居兼仕事場で行いました。『おにぎりをつくる』『みそしるをつくる』、どちらも同じ。
東京から神戸の我が家まで、長野さん、寄藤さん、編集者さんに来ていただいたんです。
長野:改めて撮影風景を見ると、こんな風だったんだって、なつかしさを感じますね。
───その中でもちょっと気になるお写真があって。これは何をしているところなのでしょう……?
高山:あー、これは撮影で使う煮干しを選んでいるところです。普段、煮干しってあまりじっと見ることはないですよね。でもよく見るといろいろな形をしているんです。
『みそしるをつくる』では、煮干しが5匹登場するので、まず私が気になる煮干しを選んで、最終的に寄藤さんがその中から写真を撮る5匹を決めるという、煮干しオーディションみたいなことをしました(笑)。
───お話を聞いてから改めてそのページを見ると、煮干しの曲がり方や表情など、それぞれ個性的に見えてきますね。あと気になったのが、この表なのですが……。
寄藤:これは「段取り表」ですね。撮影する構図とか、場面とか、時間を決めたものを、ページ順に並べて、撮影漏れがないようにチェックしていったものです。
この写真はかなり終盤の方ですね。ほぼ撮り終わってホッとしているところです(笑)。
───撮影はどのくらい時間がかかったのですか?
寄藤:10時ごろから16時ごろまで。途中お昼休憩をはさみましたが、4〜5時間は撮影していたと思います。
長野:この本では、太陽の自然な光で撮ると決めていたので、撮影は日中、日があるうちに始めて沈む前に終えなければいけませんでした。
寄藤:『おにぎりをつくる』の撮影のときは、こういう段取り表を作らずに撮影をはじめたんです。そうしたら、ゆっくりお昼を取りすぎちゃって、どんどん撮影時間が厳しくなって……。段取りの大切さを痛感しました(笑)。
なので、『みそしるをつくる』では、しっかり段取り表を用意して臨みました。結果的に、スムーズに進行出来て終わった感じでしたね。唯一、油揚げの場面が、ちょっと戸惑ったかな?
長野:そうですね。油揚げはどの順番で切っていくのかを、高山さんに確認したんですよね。聞いてから、どういう構図で撮影するかを考えたんです。
───これが構図の確認と、実際のページですね。
寄藤:そうです。右ページが子どもの手で、左ページが大人の手です。この構図も現場で話しながら考えました。
長野:こうやって比べてみると、面白いですね。
高山:撮影のときに、構成を聞いて知っているのですが、実際に本の形になったものを見ると、また新しい発見というか、驚きがありますね。私、最後のみそ汁ができ上る場面がすごく好きなんですよ。
───「で で で で できました」の所ですね。
高山:そう。これはね、最初の文章は「できました。」だけだったんです。でも、寄藤さんがデザインしたものを見たら、「で で で で」って言葉をつけたくなりました。子どもたちはきっと「で で で で できました。」って言うぞって。「で で で で で で で」って機関銃みたいに言ってほしいなって。自分でもちょっと発明でしたね。