「おはなし名画シリーズ」(全20巻)は、ダ・ヴィンチ、ゴッホ、ピカソなど、有名な画家の生涯を童話でたどりながら名画を楽しめる本格的大型画集です。そのシリーズは21巻より「新・おはなし名画シリーズ」として引きつがれました。その最新作は第24巻『対訳 北斎の富士』。浮世絵界の巨匠・葛飾北斎が愛した富士の絵を、「富嶽三十六景」そして「富嶽百景」を中心に集めた絵本画集です。今回、シリーズ最新作の発売を記念して、「おはなし名画シリーズ」の生みの親であり、編集・文章を担当した西村和子さんに『対訳 北斎の富士』への思いを伺いました。
「新おはなし名画」の24巻は《対訳 北斎の富士》です。 世界遺産に登録された富士山。その山に魅せられた江戸時代の天才絵師葛飾北斎によって描かれた28枚の富士山の絵とそれにまつわる「おはなし」を英語と日本語で楽しめます。
●「富嶽百景」と出会ったことで生まれた『対訳 北斎の富士』
───絵本ナビでも「新・おはなし名画シリーズ」の『対訳 鳥獣戯画』がとても人気で、「面白い!」「わかりやすい!」とレビューも多く寄せられています。今回は『対訳 北斎の富士』ということで、富士山が世界遺産に登録されたこともあり、改めて富士山に注目が集まっているように感じました。
そうですね。私どもとしては嬉しい限りです。
───葛飾北斎は「おはなし名画シリーズ」でも一度取り上げられていて、今回2度目の登場となるのですが、北斎の富士山で絵本を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
「富嶽百景」に出会ったことですね。
───「富嶽三十六景」は誰もが知っている北斎の代表作ですが、さらに「富嶽百景」があったなんて知りませんでした。動物や龍などが登場していたり、かなりユニークな構図のものばかりでびっくりしたんです。
そうですよね。私も古書で目にして初めて知りました。
───元となった「富嶽百景」とはどんな作品なのでしょうか?

───モノクロや2色などシンプルな色使いで描かれている作品ですね。「富嶽三十六景」が「ベロ藍」に代表される鮮やかな色を使っていたことに比べると、より構図などに目が行く作品集なんですね。
モノクロなのに迫力があったり、ユーモアにあふれていたり。すでに「富嶽三十六景」で46点の富士を描きながらさらに102点、異なる構図で富士を描くんですから、本当に素晴らしいと思います。
───『対訳 北斎の富士』に登場している富士の中で、特に西村さんオススメの作品を教えていただけますでしょうか?

海上の不二(富嶽百景)
江戸の人々の暮らしを多く描いた北斎ですから、≪七夕の不二≫や≪雪之旦の不二≫など、当時の暮らしの中に生きる富士山を描いた絵も面白いですよ。≪窓中の不二≫や≪掛物の発端≫などユーモアあふれる作品に登場するおじいさんは北斎本人なのではないか?と思ったりしています。
七夕の不二、掛物の発端(富嶽百景)