●絵画を身近に感じてほしい「おはなし名画シリーズ」
───「おはなし名画シリーズ」は「子どもが気軽に本物の芸術に触れる環境を作りたい」という思いでスタートしたシリーズ。現在「おはなし名画シリーズ」全20巻と、「新おはなし名画シリーズ」4冊が刊行されていますが、シリーズを始められたときのコンセプトを伺えますか?
つねづね身近に楽しめる画集がほしい、音楽がいつも流れているみたいに、部屋のどこかに転がっているような画集を作りたいと思い続けていました。読者の方から「ダイニングキッチンに置いてあります」というようなお葉書をいただいいた時は、とても嬉しいですね。
───西村さんはすべてのシリーズに関わられてきているんでしょうか?
編集としてはずっと関わっていましたが、文章も書くようになったのは最近ですね。私は美術史の専門家でも画家でもない、素人の立場から取り上げたい作品を選びます。なので、より親御さんに近い視点で作品を届けられるのだと思います。

編集過程の貴重な資料を見せていただきました。
───日本ではまだまだ美術に対する敷居が高いように感じますが、このシリーズは美術に触れる導入として、とても入りやすいと感じました。やはり子どもに親しんでほしいと思って作られたんでしょうか?
子どもから大人までですね。子どもの本だと思うとちょっと難しいとおっしゃる方も多いですけど、絵画の多くは子どもの為に描かれているわけではないので、限定する必要はないのではと思うんです。音楽だって、子どものときから童謡ばかり聞いているわけじゃないですから。むしろ、お父さんお母さんが楽しんで読んでいると、子ども達も興味を持ってくれると思うんです。
───「おはなし名画シリーズ」に書かれている、「お母さんが作った子どものための美術全集」というフレーズは、そのまま西村さんの思いでもあるのですね。現在、「新・おはなし名画シリーズ」も含めると24巻まで出ていて、すでにライフワークの様になっているかと思いますが、取り上げる画家はどのようにして思いつかれるのでしょうか?
そうですね、最初は『ゴッホとゴーギャン』、『ルノワールとドガ』という形で、同じ時代に活躍した有名な画家を2名ずつ取り上げていました。その中に『ピカソ』や『マティス』、『葛飾北斎』など単独で紹介できる画家を混ぜていました。「新・おはなし名画シリーズ」では、前シリーズよりもページ数を減らしたことで、『対訳 鳥獣戯画』や『若冲のまいごの象』など画家よりもテーマに重点を置いて紹介する内容を目指しました。
───作っていて楽しかったシリーズはありますか?

───シリーズ次回作の企画はすでに決まっているのでしょうか?
───絵本ナビの読者に『対訳 北斎の富士』の楽しみ方、メッセージをお願いします。
───「1冊目にピッタリ」という言葉が本当にピッタリですね。
そうですね。『対訳 北斎の富士』に関していえば、私は制作の手を離れた今、ぬり絵をして楽しんでいますよ。

───ぬり絵ですか?
これは私の個人的な思いですが、北斎は『富嶽百景』を最終的に錦絵にしたかったと思うのです。北斎が色をつけるとしたら、どんな色をつけたのか、ページをコピーして試しに色付けしてみたんです。
───すごい!面白いですね!
色付けしてみたら、結局色がついていない方が良いと思えたりしてね(笑)。こんな風に絵画ってまだまだいろいろな楽しみ方を含んでいると思います。もし、絵画に対して敷居の高さを感じているようであれば、このシリーズで、きっと感覚が変わるのではないかと思います。『対訳 北斎の富士』で見つからなくても、24冊の中からお気に入りの1冊を見つけてもらえたら嬉しいです。

───ありがとうございました。
北斎ぬり絵、我が家でもやってみます。
