夏休みが明日で終わる。ぼくにはやり残したことがひとつある。神社の森で見たオオヒカゲチョウだ。羽に何かがかいてあった。もう一度見て、たしかめたい。
「カンッ カンッ カンッ カンッ」
あの日ぼくは、自転車に乗り、ふみきりがあくのを待っていた。晴れ渡る空のもと、畑の中の一本道をのぼりきり、目指す森が見えてくる。ひっそりとたたずむ神社に着くと、影が飛び込んでくる。オオヒカゲだ。ぼくを待っていてくれたんだ。その時……!
その瞬間に見たものを、体験した不思議な出来事を、ぼくはずっと忘れない。きっとこれから何度でも思い出す。絵本作家あべ弘士さんが故郷の旭川で体験した少年時代の出来事をもとに、夏の景色を色鮮やかに描き出し たこの絵本。
「ぼくの夏を、かけぬける。」
広い景色、一本道、空にはチョウやキツツキが飛び、目指す場所に行きつく頃、遠くで雷が鳴りはじめる。どれもが記憶の中で生き続ける、大切な風景。読者もまた、その忘れられない一日を追体験できるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
あの日ぼくは、ふみきりがあくのを待っていた。丘の一本道を自転車をこぐ。オオヒカゲチョウのはねをもう一度見たい。その思いで自転車を走らせ、古い神社の木漏れ日の中、ぼくは、チョウの羽に地図を見て──。あの夏の日のぼくの不思議な体験は、きっとこれから何度も思い出す。著者の旭川での少年時代の体験を元に描かれた鮮やかな絵本。
図書館の季節の特集コーナーで見つけました。
夏休みの終わる前の日の風景を切り取った1冊です。
セミがなき、土埃が舞い、かみなりの予感……。なんだか絵本から夏の匂いがしてきそうなくらいの臨場感です。
自分もその場所にいて、一緒に冒険をしているような気分を味わえました。夏が終わるあのなんとも言えない切なさも感じることができる作品です。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子20歳、女の子17歳、男の子14歳)
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