「はるになったら、うちに あかちゃんが うまれるのよ。」
おかあさんがいくちゃんにおしえてくれました。
おねえさんになるのよ、と言われたいくちゃんは、得意な気持ちでいっぱい。
お友だちや園の先生に、あかちゃんがうまれることをおしえてあげます。
だけど……ちょっぴり(あかちゃん きらい)って思うことだってあります。
公園に行きたくても、おかあさんがすぐに一緒に行けないとき。
おばあちゃんのおみやげが、あかちゃんのものばかりだったとき。
でも、いくちゃんがちょっぴりわがままを言ったある日、おかあさんが救急車で運ばれてしまって……。
子どもにとってみれば、まだうまれていないあかちゃんのことは、よくわかりません。
ピンとこないし、まわりの大人たちだけうれしそう。
まだおねえさんじゃないのに、おねえさんにさせられているみたい……。
「あかちゃんがうまれるって ほんとに とってもたのしいの? すてきなの?」
いくちゃんは声に出して聞けたけど、口に出せない子もいるにちがいありません。
「ねぼすけスーザ」シリーズなどの著作がある広野多珂子さんが、いくちゃんのさまざまな表情を描きます。
矢部美智代さんは、子どもの気持ちだけでなく「女の人があかちゃんをうむこと」や「あかちゃんが無事にうまれてくること」の大変さや尊さをおしえてくれている気がします。
本書はいくちゃんの思いに寄り添いつつも、その心の成長を描きます。
(いくちゃんの正直な気持ちが、手書き文字で書かれてるのも素敵です。)
表紙には「あかちゃん、がんばれ!」と祈るいくちゃんのまっすぐなまなざし。
ちいさないのちの無事を、一緒に祈りたくなります。
だれもが皆こうして生まれてきたんですよね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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