だれもに、いつか別れのときがくるということを、まだ知らなかったのは何歳だったでしょう?
いつかは、だれでも、しんでしまう。
そのことを知ったあとで、ふとした瞬間に別れを意識して、怖くなった経験はありますか?
この絵本の主人公「マーくん」は、おとうさんが大好き。
もしも、おとうさんがしんじゃったらどうしよう?
そんなことを考え出したら、眠れなくなってしまったマーくん。
「だいじょうぶ。
おとうさんは ぜったいに しなないよ」
隕石が落ちてきたって、バットで一発ホームラン!
ドラゴンがきたら、ステーキにして食べてやる!
毒へビに噛まれたら、そのときは救急車を呼べば、だいじょうぶ、だいじょうぶ。
「でも やっぱり おとうさんが しんじゃったら どうしよう?」
おとうさんは、たとえしんだって、ぜったいにしなない。
だって、もしも、しんだらさ──
子どもの不安をまっすぐに受け止め、ひとつひとつ、あかるくたのしく、解きほぐしていく。
次から次へと現れる、荒唐無稽でユーモラスなページとは裏腹、マーくんお父さんの子どもに対する真摯な姿勢に、思わず胸を打たれます。
もしも目の前からいなくなったって、おとうさんはぜったいにしなない!
こんなふうに抱きしめてくれるマーくんのお父さんなら、きっとそうだろうなと、信じさせてくれます。
とてもやさしくて、ユーモラスな一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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