昔から語りつがれてきた愉快なお話を、精魂こめた版画で描き出した絵本。「おおかみとひきゃく」「じじとばば」他2編。
梶山俊夫さんは不思議な存在感を示す絵で、物語を自分の境地に引き込んでしまう画家であるかと思うのですが、とても気になる作家です。
絵の中に、梶山さん独自のシンボルをいっぱい描き加えているのですがそれが語り部の言葉のように響いてきます。
そんな作品の中で、この絵本は梶山さんの勝負球というか全身の力を込めた直球のストレート。
お話というよりも梶山さんの作品として深みと味わいのある民芸品となっています。
4つの話で構成された版画絵本。絵はもとより文章も後書き奥付全て木版画で構成されていて、昔の和綴じ本、※※草子的な趣を全面に押し出しています。
物語はというと聞いたことのある昔話なのですが、梶山さんは完全に自分の世界のお話にしてしまいました。
最初の「おおかみとひきゃく」でしっかりと引き込んで、「じじとばば」、「秋の夜」で楽しませて、最後にはタイトルともなっている「きりなしばなし」で煙に巻く見世物小屋的な組み立て。ミゴトです。
見てみないと何とも言えない絵本ですが、この指向は昔話、梶山さんの作品が少し過去形になった高学年、絵本心を愛でる大人にとってとても香り高い絵本だと思います。
ちなみにこの「おおかみとひきゃく」の絵と話を読んで、自分は読み手である私がオオカミ、聴き手である子どもたちは飛脚だと思えました。
私もフンドシをしっかりしめてかかりましょう。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子13歳)
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