
1943年、リトアニアのヴィリニュス。 黒い服の男たちがつくった、ゲートの中のまちでくらしていたユダヤ人の「ぼく」とまわりの人々の物語。 ヨーロッパのどこで起きてもおかしくなかった、繰り返してはいけない歴史をえがきます。

ユダヤ人に星の印が付けられた時代の、リトアニアを舞台にしたお話です。
最初に描かれた人々の絵と、最後に描かれた絵を見て、小石が何だったのかが判ると愕然としました。
主人公のイーサンのガールフレンドだったリヴカを除いて、みんな小石になってしまったのです。
この絵本は、小石になってしまったイーサンの側から見たお話です。
些細な誤解で喧嘩をした後味の悪さを残して、リヴカの家族は町を出ていきます。
残されたイーサンと多くのユダヤ人がどうだったのかを抽象化した形で描いています。
カラスに取られてしまった黄色いベーグルからして、ナチスとユダヤ人を象徴しています。
イーサンがコンサートでヴァイオリンを弾こうとした、弦はナチスの行為への抵抗の意思表示だったのでしょう。
その弦が切れてしまったのと、ユダヤ人の絶望感が重なり合います。
そして、みんな小石になってしまったのです。
一方、リヴカは生き延びました。
イーサンとの別れから、おばあさんになって登場するまで、リヴカはどのようにして生きてきたのでしょう。
無事で良かったことを喜びました。
明るい生活ではなかったでしょう。
リトアニアが舞台だけに、杉原千畝のことが頭をよぎりました。
リヴカは、杉原千畝の発行した「命のビザ」によって救われたのかも知れません。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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