小さい頃から走ることが大好きだったボビー・ギブ。学校ではスカートをはかなければならないし、陸上部にも入れない。でも、学校が終わればすぐにズボンにはきかえ、森へ駆け出します。木々の間をぬって走り続けるボビーの早いことといったら。
毎年春になると、ボビーの家の近くで「ボストンマラソン」が開かれます。スタートからゴールまでは、なんと42.195キロメートル。そんなに長い道のりを走るなんて! ボビーは目の前を走り抜けるランナーを見ながら、足がうずうずしてきます。
「ああ、わたしもいっしょに走りたい!」
次の日から、ボビーは大会に向けて走りはじめます。どんな険しい道でも、どんなに寒くても、ボビーは走り続け、とうとう出場を申し込んだのです。ところが返ってきたのは「女性はマラソンに出られません」という言葉。女性の体は、42キロも走るようにはできていないというのです。それでもあきらめなかったボビーは……。
1966年、アメリカのボストンマラソンで繰り広げられた「世界を変えた挑戦」を描きだしたこの絵本。今では考えられないことだけれど、当時は「女性にはスポーツは向いていない」とされていたのです。そんな中、ボビーは覚悟を決め、ルールを破ってレースに参加。見事に走りきり、人々の考えを変えていきます。
読んでいるだけで、ボビーと一緒に走り出したくなるような衝動に駆られるこの絵本。歴史的背景を知る驚きだけでなく、ボビーの感じている疾走感や気持ち良さ、自由を求める心などが感覚的に伝わってくるのは、色鮮やかなコラージュ、貼り絵によって表現された魅力的な場面の数々によるもの。
まさに今、あきらめずに挑戦し続けている人や、心が折れそうになっている人にも。力強く背中を押してくれる一冊となってくれることでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む
ボストンマラソンをはじめて走った女性ボビー・ギブ(1947年?)の物語。
「女性にはスポーツは向いていない」とされた時代、学校の陸上部にすら入れない彼女は、あきらめずに放課後ひとりで走りつづけた。そうするうちに1966年、「ボストン・マラソン」に出たいと考えた。走っていればレースに出たくなるのは必然。しかしルールによって女性はマラソンに出られない。それでも申し込むが門前払いをくらう。彼女はあきらめなかった。大会当日、スタート地点のしげみに身をかくし、号砲とともに他の選手にまぎれて走りだした。とちゅう彼女のことに気づいた男性ランナーの応援や、沿道の大声援をうけて42.195キロを走りきる。記録は3時間20分。彼女は周囲を仰天させ、以来「女性もマラソンを走る体力がある」という考えが広がった。これを機に1972年ボストンマラソンで女性の正式参加が認められる。ボビーは道を切り開いた。「できない」といわれてもあきらめずに挑戦した。その勇気は、今でも多くの人をはげまし「夢を信じて挑戦すれば、世界を変えられる」という気持ちにさせてくれる。
続きを読む