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とある広告代理店の企画担当者がひねりだしたテレビ番組のアイデア,その名は「長生き競争」。いったいどんな番組? 短編集。

『星新一ちょっと長めのショートショート8』(理論社)。
表題作である「長生き競争」をはじめとして、11篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
表紙のかわいい動物は、表題作の「長生き競争」に登場するモルモット。それに見えるどうかわかりませんが、和田誠さんのがんばりが感じるイラストです。
物語はこのモルモットに薬を与えて、どの薬が長生きに効果があるかを競合わせる話で、おしまいはそれを企画した男がこっそりと一番効く薬を服用していたという、ブラックユーモアが効いた話になっています。
この巻で一番面白かったのは、「半人前」というショートショート。
土建会社を経営しているエヌ氏が偶然知り合った青年を秘書として雇い始めると、工事現場で爆発が起こって足をくじいたり、自動車事故にあったりと、不思議と身の危険がたびたび起こる。青年のせいではないが、やっぱり気にかかるエヌ氏は青年に解雇を言い渡すが、なんと青年は半人前の死神であると告白。半人前ゆえに、死に至らせることができないという。
エヌ氏はこれを聞いて、青年をそばに置くことに決める。危険はあっても、絶対に死ぬことはない。何しろ青年は「半人前」の死神だから。
新作落語にもなりそうな、ショートショートでした。 (夏の雨さん 70代以上・パパ )
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