あらしのよるに
激しい嵐の夜。ごうごうとたたきつける雨の中、白いヤギはやっとの思いで小さな小屋にもぐりこむ。暗闇の中でじっと嵐のやむのを待っていると、ガタン!と誰かが小屋の中に入ってくる。入ってきたのは、足をくじいたオオカミだ。するどい牙を持つこのオオカミ、ヤギの肉が大好物ときている。
「すごい あらしですね。」
「まったく。あなたが きてくれて、ほっとしましたよ。」
風邪をひいて鼻も利かず、お互いの姿も見えない中、ヤギは相手をヤギと、オオカミは相手をオオカミだと思い込み、勘違いしたまま二匹は会話を続けていく。似ても似つかぬはずのヤギとオオカミの間に、やがて不思議な友情が芽生えていき……。
「食うもの」「食われるもの」という緊張感の漂う関係性の中で行われる二匹のやりとりを、時に笑い、時に手に汗握りながら見守っているうちに、読者はすっかりこの物語に入り込み、その行く末が気になって仕方がなくなってしまうのだ。
おっとり素直なヤギと、迫力がありながらも何だか憎めないオオカミ。個性的な二匹の軽快な会話劇を更に盛り上げているのが、自由で大胆な線によって描かれた魅力的な絵。ユーモラスでありながら、迫力のある姿を垣間見せるその表現は、実際に旭山動物園で25年飼育係を務めてきた経験のあるあべ弘士さんだからこそ。
1994年の刊行以来、子どもから大人まで幅広い世代に愛され続けてきた絵本シリーズ「あらしのよるに」。シリーズ1作目となる今作は、産経児童出版文化賞JR賞、講談社出版文化賞を受賞。その後、国語教科書に掲載され、アニメ映画化においては日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞。発行から30年、続編を含めたシリーズ累計発行部数は380万部を超える、大ベストセラーとなっています。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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