独特な世界を描き続ける長田真作さんとしては異質な大作絵本です。
それだけ、真剣に戦争と向き合おうとした思いが込められている作品です。
死を前に、忘却を前に、長田さんのお祖父さんが語った戦争体験は生々しいものでした。
呉での戦争体験は、何重にも戦争と向き合うことになったかと思います。
私は小学1年生を呉で過ごしました。
呉は以前は海軍の町であり、広島市の直ぐ側にありました。
長田さんのお祖父さんは、そこで空襲の経験し、海上で繰り広げられた軍艦への攻撃を見て、広島原爆とも向き合うことになったのです。
昼間と夜間を切り分けて描かれた絵で、目にした光景と、夜間の苦しみが90ページを超える作品の中に凝縮されています。
空襲を受けて避難した防空壕の中は、ひしめき合う人が助かろうという思いで、修羅場となってしまったことが痛いほどに伝わってきました。
極限の空間ではきれいごとは語れないのです。
海上での戦闘には、身近でこのようなことが行われたことに、戦争に対する諦めのような無力感を深めたに違いありません。
そして広島原爆体験です。
続けざまに戦争地獄を体験されたお祖父さんが、どのようにして戦後を生きてきたか、心に蓋をしてきたか、想像を超えるものが、この絵本で展開されました。
まさに戦後80年の2025年の夏に出版された絵本です。
過去の記憶として留めたいけれど、今世界は同じ過ちを繰り返そうとしているように思えてなりません。