娘が3歳のとき、この本ほど何度も繰り返し読んだ本は他にありませんでした。なんて心豊かな親子でしょう。コンチは、元気いっぱい、好奇心旺盛の、やさしいきつねの子。こんなふうにまっすぐ、素直に育ってくれたらなあ、と親なら誰もが願うような子どもです。お母さんも、そんなコンチを、温かく見守りながら、常に大らかに、やさしく包み込んでくれます。
私が1番感銘を受けたのは、「いちご」のお話です。摘んできたいちごを、なめたり、胸にあてたりしている間に、シャツをしみだらけにしてしまったコンチ。それを見たお母さんは、しみの上に、赤と緑の糸で、いちごを刺繍したのでした。私も、生まれ来る我が子のことを思いながら、何枚もの産着に一針一針刺繍をしたときのことを懐かしく振り返りました。でも、いざ、子どもが生まれると、目の前のことに追われる毎日で、刺繍などする時間も、気力もないどころか、いつのまにか、服の汚れを気にしたり、子どもの小さないたずらにも、ついかっとなって怒ってばかりの自分がいて、心のゆとりを欠いていたこと深く反省しました。
もう1つ好きなお話は、「おくりもの」。これは、娘も大好きです。ちょっとお姉さん気取りのつねこちゃんとコンチのやりとりが可笑しく、くすくす笑っています。娘もよく、小石や葉っぱやどんぐりや花などを、庭や公園からもってきては、「ママ、おみやげだよ!うれしい?」と言いながら、大事そうに手渡してくれますが、そんなときは、どんなものでも必ず、心から喜んで受け取るようにしています。子どもって、本当にお母さんを喜ばせてあげたい、お母さんの喜ぶ顔が見たい、という純粋な心でいっぱいなんだなあ、と思うと、それだけで胸が詰まりますね。