この本は読む度に童心に返ります。すると不本意ながら、私は子供という人種に憧れます。なぜなら、子供達は「わたしのおうち」の世界の当事者なんです。あきらかに。
例えばクローバーやカラスノエンドウやタンポポの咲く野原、子供が一人で持ち運べる段ボールのお家、「わたし」の弟のポケットから飛び出したばった、空がばかみたいに青くない事の自然さ、これらのすべてが大人の目線だとやっぱりなつかしいんですよね。悔しながら。でもこればかりは子供の特権で、我々大人が代わりに当事者になる事はできない。人は誰しも本能的な「子供心」というのを持っていると思うのですが、それはきっかけがないと一生思い出せない或いは思い出す必要のない、昔算数で習った帯分数のようなものなのかも知れない。それを匂い、感触まではっきりと蘇らせてくれる、私にとって貴重な一冊です。