海を染める、輝く日の出に、風見鶏が「コーベッコー」。
コケコッコーでなくコーベッコー。「みんなおきろよ。港町に朝がきた」
風見鶏が朝のときをつげます。
不思議な宇宙望遠鏡をかついだクロメガネおじさんたちが、観覧車にのりこんで、朝のおひさまを「まじろまじろとしらべはじめ」、おひさまのほっぺのそばを通過中の金星を発見!
その金星はブルルンとおひさまにはねとばされて、ロッコーざんのみずうみにボシャーンと落ち、金星の口から出た船は女の子のヴィーナスカをのせて川をどんどんくだり、ヌノビキイのたきをすべりおり……鉄橋をすぎ、競馬場へ。
ヴィーナスカの旅は続きますが、ふと気づくとこの絵本、出てくるのは「神戸港(コーベッコー)」にゆかりのあるものばかり!
人気スポットの大観覧車、港を見下ろす六甲山。神戸市街地のすぐそば、布引の滝。神戸港ではかつて「1874(明治7)年にフランスの観測隊と清水誠が金星の太陽面通過を確認した」という歴史事実があるそう。国際的な競馬場も、生田川と三宮東門筋のあいだに存在したそうです。
遠い異国の絵画のような、煌びやかな喧噪に満ちた、スズキコージさんの絵筆が冴え渡る一冊。
見返しには神戸港の地図が描かれ、港のシンボルの風見鶏とヴィーナスカが、まるで神戸じゅうを案内したかのよう。
神戸にゆかりのあるものがストーリーに編み込まれた、不思議な絵本になっています!
朝日とともに色に染まる海と町。船の電飾や、町のあかりが輝く夜景……。『コーベッコー』を読むとその美しさをこの目で見たくなり、神戸に行ってみたくなります。
でも一方で、摩訶不思議な、世界のどこかの港町をめぐる気分で本書を楽しむのもおすすめ。
こんな絵本、見たことない! スズキコージさんの遊び心と、楽しい挑戦にあふれた絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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