朝、おひさまがのぼる前から、わたしは土を耕し、草をとり、種をまく準備をはじめるの。考えるだけでわくわくしちゃう。ちっちゃい種を、心をこめてまいたよ。でも、カカシの見張りを立てて、野うさぎに種を食べられないように気をつけても……、せっかく芽が出たのにぐちゃぐちゃにされちゃった!
「エバのおにわ」と立札を立てて、花が咲くのを楽しみにしていたのに……。エバのショックと悲しみが描かれます。ママやパパに慰められ、立ち直ろうとするエバ。そして野うさぎのあとをたどったエバは、うさぎの巣とあかちゃんを見つけます。「野うさぎも、あかちゃんを そだてていたんだね!」
エバの発見と気持ちの変化。そしてもう一度最初からやりなおす姿。大切に世話をして、ついに大きく咲いた花は、パッと庭じゅうをかがやかせるような美しさです。さらにエバの花は新しい命の誕生もお祝いします。それは……?
おねえちゃんになった女の子の心の成長が、自然の中の命と寄り添いあうように描かれる絵本。翻訳者の横山和江さんの、軽やかな言葉選びもぴったり。エバの花への愛情、ママやパパのエバへの愛情。そしてエバが子うさぎや、新しく生まれた弟へ注ぐ真っ直ぐな愛情……。たくさんの愛が絵にも文にもあふれ、エバの前向きさに心温められて、何度も手にとりたくなるのです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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